古米弘明先生の二日目の講義は、初日に出された質問表に答えることから始まりました。なぜ四日市では夜中に喘息が起きたのか、水俣の水銀汚染の海域の埋め立てはどう行われたのかという質問に、具体的にお答えになっていました。埋め立て地が公園になり、新しい街づくりの場所となっています。

今日は「都市の水代謝における上下水道システム」です。水の量と質をどう確保し、つきあっていくのか、自然系と人工系の水循環がうまく調和した都市独自の水利用システムを作り出すことが大事です。
「水収支」という概念で、定量化と数量化により分かりやすくすると、状況が見えてきます。東京を例に、都市の水循環の全体像が明らかになります。都市の「水収支」の絵を描くことが大事で、北京や天津といった地下水を多く使う都市も、この絵が必要でしょう。
日本では1960年代に水道が急速に整備され、ほぼ98%となり、水系感染症患者数が大幅に減りましたが、これからは再整備が急に必要になります。下水道の役割も時代とともに変わり、汚水に加えて雨水対策も重要になってきました。
「水の再生・再利用と水環境保全」では、一人当たりの水使用量と汚濁の排泄量から下水処理の目標値が計算できます。再生水の利用がポイントになりますが、どこまで費用をかけるべきか、東京の具体的な事例を紹介した上で、皆で考えてほしいと、討論の時間が設けられました。
水の安全は中国でも関心をもたれています。次から次へと質問が出されました。南京市へのアドバイスや水処理のコスト問題、ダムの自然への影響から原発の汚染水にいたるまで、時間をオーバーして質疑応答が続きました。
50年後を見て目標を立て、分かりやすい情報と知見をきちんと伝えていく;人為的なことをやれば、環境に変化が起こる、自然への影響を正しく評価して、利点と欠点を把握して対応していくことが大事です。古米先生は、出された質問をその場でパソコンに入力し、スクリーンに映しながら答えていきます。まさに分かりやすい情報の発信を実践しておられたのが、印象的でした。
この日も同時通訳の学生さんは、科学用語の洪水をみごとにさばいて大活躍でした。ご苦労様でした。(刈間)