ディシプリン(学問領域)に
とらわれない思考を身につけたい

第1回 03月01日 國吉 康夫

ロボットにおける身体性と認知・行動の関係

実世界で行動する知能において,情報処理だけでなく身体性の効果が極めて重要なことが分かってきた.

本講義ではまず,ロボットの認識や行動のために,身体の物理的・幾何学的性質がいかに重要な役割を果たすかを,全身でのダイナミックな動作や能動的な視覚機能などを例にとって具体的に説明する.次に,行動や認知の発生・発達を考えるとき,身体性こそが情報源となることを指摘し,身体から多様な可能性を引き出す原理を呈示する.

最後に,ロボティクスの手法に基づいて構築した人間型の胎児・新生児発達シミュレーションモデルの研究を紹介しつつ,「身体が脳をつくる」という考え方を説明する. この新しい考え方は,人間の知能の原理解明に新たな光を投げかけるだけでなく,従来の固定的プログラム方式と全く異なる柔軟で適応的なロボット知能の実現に向けた新たな方法論にも結び付くものである.

講師紹介

國吉 康夫
情報理工学系研究科/工学部教授 専門:ロボット学・知能システム情報学 1991年東京大学大学院工学系研究科修了,工学博士,同年電子技術総合研究所研究員,1995年同主任研究官, 1996年〜97年米国マサチューセッツ工科大学人工知能研究所客員研究員,2001年東京大学助教授,2005年同教授.身体性に基づく認知の創発と発達,模倣の科学,ヒューマノイドロボットなどの研究に取り組んでいる.研究論文等約450篇,編著書19篇.日本ロボット学会研究奨励賞,同論文賞,佐藤記念知能ロボット研究奨励賞,IJCAI Outstanding Paper Award,ゴールドメダル「東京テクノ・フォーラム21賞」等受賞.日本学術会議連携会員.日本ロボット学会,人工知能学会,情報処理学会,IEEE, 日本赤ちゃん学会などの会員.
学生の声

-- 東大学生より
皆さん、この掲示板に書き込んでいただいてありがとうございます。南京滞在中に皆さんから聞きました意見はこちらの先生にもしっかり伝えます。 下の皆さんの意見はどれも参考になるのですが、特に、南京大学の関係学部の学生も呼び、そしてその学生と、我々、東大生の間の、通訳として、南京大学の日本語科の学生が働くというのはとてもいい意見だと思います。 私の意見としては、やはり、今回は日程は少し窮屈すぎたのではないかとも思います。東大の先生の授業を受けて、すぐにその後、議論というのはやはり疲れるのではないでしょうか。院生の方達は、私たち日本人と交流もし、先生たちにも付き添っていただき、そしてレポートもしなくてはならず、とても大変そうでした。スケジュールに関しては再考の余地があると思います。 國吉先生、広瀬先生の授業に関しては、以下の点が興味深かったです。今までの科学では、天体や物体の運動、あるいは光の反射など、無機物中心に発展したきた観がありましたが、これからの科学はそうではない。人間について、特に、人間がどう考えるか、どのような感情を抱くかについてや(恋愛などの問題も含まれるのではないでしょうか)、人間はどのようにして胎児から成長し、身体の制御の仕方を学ぶのかなど、今までの科学が考えてこなかった問題を扱う時代が来たということです(その際、脳やDNAを中心に考えない点が國吉先生の優れた点だと思います)。人間の感覚というものは人によって違います。僕がいい匂いだと思ってつけてる香水が、他人にとっては臭いかもしれない。こうした、人間によって感じ方の異なる、曖昧な問題をこれからの科学は扱おうとしているのだという気がしました。國吉先生が言及されていた、カオスなどの非線形科学は、そうしたものに対する一つのツールになってきたものだとも思いますが、それにあわせて文系と理系の垣根を超えた新しいやり方が模索されていくべきだという必要性を強く感じました。 非線形科学やカオスについてはhttp://zh.wikipedia.org/wiki/混沌理? を見るといいと思います。これで、またわからないことがあれば、17日から来る学生に、再び質問してみるのもいいと思います。

-- From UN student
貴校の有名教授の方々に南京大学の私たちのために講座を開いていただいて、大変感謝しています。今回は今の日本の科学技術の発展について幾らか理解することができました。理工系の専門ではないので、専門的な術語や或いは難しい理論についてはよく分からない部分もありましたが、やはり日本の科学技術の発展と、イノヴェーションの能力には感嘆させられました。私は思ったのですが、これは日本人が日常細かい点を大切にするという原因によるものでしょうか。

-- From UN student
國吉先生の講座のなかで、日本では現在、老人や身障者の日常生活の世話をするロボットを研究しているというお話がありましたが、もし将来実際にこれらのロボットが日本人の生活のなかに普及したとすれば、一日中ロボットとだけ向き合っていなければならない老人たちは寂しく感じないものでしょうか。これでは、人間的な配慮が欠けているということにはなりませんか。

-- From UN student
東大の先生方には南京大にきて授業をしていただき、大変感謝しています。 毎回、時間の関係で講義があわただしく終わってしまいます。できることなら、授業のなかで先生方と私たち学生とがもっと交流(質問など)できるよう希望します。(Smile)

-- From UN student
今回の二人の先生方の素晴らしい講演に感謝いたします。今後いらっしゃる先生方にもたいへん期待しています。廣瀬先生の講演に関してですが、質問する時間がありませんでした。実は、ヴァーチャル・リアリティ(VR)の不思議さについて耳にしたことはありましたが、今回はもっと新しい知識を学ぶことができました。私が関心があるのは、次のような点です。つまり、VRの問題点というのは既に現れていて、例えばVRの世界に溺れてしまって、現実との関わりを失う、とりわけ学生がネット上のゲームに代表されるVRの世界のなかで自己を見失ってしまうといった状況は珍しくありません。VR研究者の廣瀬先生は、このVRと現実世界の間の衝突という問題についてどのようにお考えでしょうか。日本ではこのような問題に対して何か技術的な考慮がなされていますか?

-- 南京大学集中講義にご参加の皆様
國吉先生、廣瀬先生の講義にご参加いただき、多くのご意見ご感想をBBSにお寄せいただき有難うございます。 BBSの使い方に関して、一つお知らせがあります。東京大学の学生さんは、ユーザーID「tokyo」で、南京大学の学生さんは「student」で、それぞれログインして書き込みを行ってください。そうすると、書き込みはそれぞれUTstudent, UNstudentと表示され、どちらの大学の学生が書いたか、分かる仕組みになっています。杉

-- From UN student
今度はただ講義での勉強ではなく、東大の学生さんたちからにもいろいろと教えてくれて、とても楽しかったです。とくに今の日本の若者の様子をちょっとわかるようになって、今後もこのような交流機会がみんなとても期待しています。

-- From UN student
まずは先生方が講義をするためにわざわざ東大から南京大学までお引越しくださったことを私たちは学生の代表としてこころから感謝を申し上げます。本当にお疲れ様でした! 講義の内容についてのコメントは実は交流会のときもういくつか提出しました。正直にいいますと、内容は本当におもしろかったです。おもしろかったですけど、われわれ日本語しか知らない日本語学科の学生にとってはその専門知識については例えばいろいろデーターとか工学についての理論とかちょっと欠けているので、理解しようにも仕方がありません。ですからそのコメントとしては 1、内容の中の専門用語はもし中国語で教えてもらえるならありがたいと思います。専門用語だけでいいです。 2、お二人の先生方の講義の内容は本当におもしろかったです。分からないところもあるかもしれませんが、なんとなく分かるような気がします。なぜなら日常生活の中の現象との関係が深いからだと思います。特に広瀬先生の羽田空港についての部分は本当にすばらしかったです。ですからこれからの講義に関してもずいぶん期待しております。 3、交流会についてですがもし東大側の学生さんみんなは専門知識について議論したいなら、こっちの関係学部の学生さんも呼んでみたらどうでしょう。私たち日本語学科の学生も参加して通訳の役目を果たしてたぶん日本語だけではなく、専門知識についても勉強できると思います。そしてその議論会の雰囲気もよくなると思います。 とりあえず、以上講義と交流会を通して、いくつかの意見です。どうぞよろしくお願いします!

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