ディシプリン(学問領域)に
とらわれない思考を身につけたい

第6回 11月17日 廣瀬 通孝

コンピューターとVR(ヴァーチャル・リアリティー)Ⅰ

(1)リアルとバーチャル:コンピュータの進化とVR世界の創出
(2)ヒトと機械:デジタル化時代の人間とは

コンピュータ技術は格段の進歩をとげた。VR技術に代表される疑似体験技術は、第2、第3の現実世界を創出し、われわれは今やパラレル・リアリティの世界 を生きている。VR世界はTVゲームなどですでにおなじみであるが、実際はもっとシリアスな存在である。本講義では、VR技術の現在に至る歴史を概観した 上で、いかなるVR世界が創出可能で、今後それはわれわれにどんな影響を与えることになるのかを考えていきたい。

講師紹介

廣瀬 通孝
情報理工学系研究科教授。 1954年鎌倉生まれ。1982年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了、工学博士。東京大学工学部講師、助教授を経 て、1999年先端科学技術研究センター教授、2006年より大学院情報理工学系研究科教授。専門はシステム工学、ヒューマン・インタフェース、バーチャ ル・リアリティ。著書に「バーチャル・リアリティ」(産業図書)、「空間型コンピュータ」(岩波書店)、「ヒトと機械のあいだ」(岩波書店)など多数。

コメント(最新2件 / 3)

tomykaira    reply

今回の講義はVR技術の歴史や現在の技術動向についてくわしく説明していただき、好奇心を抱きました。
そのなかでも特にプリミティブな感覚、すなわち嗅覚や味覚に対するアプローチが興味深かったです。
それに関して質問させていただきたいことがあります。

嗅覚にアプローチするデバイスの開発は、科学技術の進歩という見地からはぜひとも進んでほしいものですが、その応用について少し疑問を感じます。
もちろん嗅覚や味覚をネットワークを経由して扱うなどベーシックな応用は当然行われると思いますが、VR技術の一貫として考えたときに、VRの世界に嗅覚を持ち込むべきかどうかには疑問を感じます。
というのも、少なくとも私の感覚では、嗅覚は視覚や聴覚よりもより強く(いわゆる)感覚に影響を及ぼすと感じるからです。たとえば映画の血の出るシーンやそれに伴う銃撃戦の音などを聞いても多少の不快感程度ですみますが、その時に血の匂いがしたら本当に気分が悪くなるのではないかと思います。あるいは推理ゲームなどで殺人現場をVR体験する場合などでは過剰なリアルさはただ不快感のみにつながるのではないかと想像します。
また、あまりに現実感覚が強いために(講義でもふれてらっしゃったかとおもいますが)体験者が現実とVRの境目を見失う事態もあり得ると思います。
そういったリスクを考えたとき、倫理的・哲学的問題としてVRのリアリティを強めることについてどのような議論があるか、特に身体とのかかわりでご紹介いただきたいと思います。

meg    reply

 講義ではVR技術の歴史的変遷をふまえた上で現在のVRの目指す姿やそれを支える技術、根本にある考え方に触れることができ、一般的に考えられている「バーチャルリアリティ」というもののイメージよりもずっと高い段階で開発が進んでいることに驚きました。また、リアルとバーチャルは対立関係にあるのではなく、スペクトル的に存在し互いに混ざりうるものであるという考え方は、シンプルではあるけれど柔軟だと思いました。

 VRの中で、空間的な体験を可能にする・電子化によって失われた身体性を回復させる・感覚スペクトルの全てを活用するなど、VR内での体験をより現実でのそれに近づけるような技術開発が進んでいることから、両者の知覚的な区別はどんどん難しくなっていくと考えられます。非常に極端な例を挙げれば、生まれてから死ぬまでずっとVRの中で暮らすことも、知覚的な経験からすると現実で暮らすことと変わらないと言えるでしょう。(SFみたいですが……)仮にVRの中の世界が現実よりも理想的だった場合でも、たいていの人は「そんなの良くない」「間違っている」というような気持ちを抱くと思います。そのような感情はどこから生じるのでしょうか?言い換えると、VRと現実の間にある心理的な距離はどのように形成されているのでしょうか?

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