ディシプリン(学問領域)に
とらわれない思考を身につけたい

第10回 12月22日 熊谷 晋一郎

脳性麻痺の身体

本講義の前半は、アスペルガー症候群当事者(広義の自閉症)の綾屋紗月氏をゲストに呼び、従来専門家によって記述されがちだった脳性まひや自閉症の身体を、再度当事者の手によって内側から記述し直すことを試みる。
すると、これまで全く別の障害として専門家に記述されていた脳性まひと自閉症が、「内部自由度」「内部統合」「不確実性」「外部との協応」などの言葉によって地続きのものとして捉えられるようになってくる。
それをふまえて、講義の後半は「周囲と協応しつつも〈わたし〉が溶解しない条件」を考え、当事者研究という実践の可能性を述べる。

講師紹介

熊谷 晋一郎
東京大学先端科学技術研究センター特任講師。小児科医。 当事者視点に立ったリハビリテーションやコミュニケーション支援の在り方について研究している。 特に、障害種別を超え、不確実性によって引き起こされる心身の「痛み」に対し、「当事者研究」という実践がもつ可能性に注目している。
レジュメダウンロード

body_theory_kumagaya.pdf

コメント(1)

mare    reply

とても興味深いご講義ありがとうございました。
身体的マイノリティーから身体を語ることは、私たちの持つ「正常」というイメージを疑ってみることのできる機会として、非常に刺激的でした。

脳性まひの身体的特徴を、「抑制性ニューロンの興奮性ニューロンへの変異」という形で生物学的に説明していただき、いわゆる「障害」と呼ばれるものへの印象が変わりました。

私が最も考えさせられたのは、熊谷先生が、コップを持つオリジナルの運動を編み出された、というお話です。
身体的マイノリティーの方が、身体に対する社会の規定から離れ、無理のない、自然な動きを自発的に獲得する、ということは、健常者の持つ「正常な」運動のイメージが…さらには「健常者」の身体が、社会から規定されていると言わざるを得ないと感じます。

身体だけでなく、私たちがそれについて考えるあらゆるものにおいて、「正しい」「異常」とは何かが地域や時代…社会によって相対的であるというのは、普段、素朴に思うことでもあります。

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