ディシプリン(学問領域)に
とらわれない思考を身につけたい

第11回 01月12日 熊谷 晋一郎

自閉症の身体

本講義の前半は、アスペルガー症候群当事者(広義の自閉症)の綾屋紗月氏をゲストに呼び、従来専門家によって記述されがちだった脳性まひや自閉症の身体を、再度当事者の手によって内側から記述し直すことを試みる。
すると、これまで全く別の障害として専門家に記述されていた脳性まひと自閉症が、「内部自由度」「内部統合」「不確実性」「外部との協応」などの言葉によって地続きのものとして捉えられるようになってくる。
それをふまえて、講義の後半は「周囲と協応しつつも〈わたし〉が溶解しない条件」を考え、当事者研究という実践の可能性を述べる。

講師紹介

熊谷 晋一郎
東京大学先端科学技術研究センター特任講師。小児科医。 当事者視点に立ったリハビリテーションやコミュニケーション支援の在り方について研究している。 特に、障害種別を超え、不確実性によって引き起こされる心身の「痛み」に対し、「当事者研究」という実践がもつ可能性に注目している。
レジュメダウンロード

body theory_Kumagaya2.pdf

コメント(最新2件 / 2)

tomykaira    reply

今回のアスペルガー障害をかかえる綾屋さんのお話はとても興味深いものでした。
健常者が注目しないような模様にフォーカスするというお話がとくに面白かったです。私がそういうものをみようと思えば、しゃがんでちかよったり、カメラをかまえたりせねばなりません。これは意図的に視野を狭くしないと注目できないということです。しかし綾屋さんはそれを自然体でおこなうことができます。特定の状況下では綾屋さんのような能力が必要になることはまちがいありません。私がしらない世界にきづかせてくれる可能性を感じました。
今後ぜひともさまざまな精神障害をかかえる方のお話をおききしたいと思います。

自閉症と脳性麻痺の身体の対称性と共通性のお話も参考になりました。

mare    reply

綾屋先生の内的な、身体の中における体験を伺うことができ、とても貴重な時間でした。
身体内部での「つながり」に目を当てて、前回の熊谷先生の脳性まひのご体験と対比されたことは、とても興味深かったです。

御著書『つながりの作法』も拝見しましたが、身体的マイノリティの方による当事者的な研究のご成果は、先生たちと違う身体を持つ私たちにも真に迫って感じられます。
英字が読みづらいという体験について、綾屋先生が感じておられる知覚を再現されて、私たちにお見せになったことは、羨ましくさえ感じました。

「記憶と記録」のプレ講演で原先生が似たようなことを仰っていた気がしますが、構成的体制に形どられていない体験とは、そのできごとに対して準備が不在であって、名前のない不安として思い出されます。
私にもその経験があるので、このようなお話を伺い、少し自己的な共感ができたことは喜びです。

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