ディシプリン(学問領域)に
とらわれない思考を身につけたい
第6回 03月17日 酒井 邦嘉
脳から見た人間の言語の記憶と記録
2011年3月17日~18日
言語に規則があるのは、人間が言語を規則的に作ったためではなく、言語が自然法則に従っているからである——。こうしたチョムスキーの言語生得説は激しい賛否を巻き起こしてきましたが、最新の脳科学は、この主張を裏付けようとしています。実験の積み重ねとMRI(磁気共鳴映像法)に代表されるイメージング技術の向上によって、脳機能の分析は飛躍的な進歩を遂げてきました。
私たちは、文法処理の時に普遍的に働く中枢(文法中枢)が左脳の前頭葉にあることを突き止めました。また、第二言語(英語)の文法の学習が進むと、同じ文法中枢の活動がダイナミックに変化することが最近明らかになりました。この文法中枢の他にも、文章理解に必要とされる中枢が左脳の前頭葉にあることが日本語だけでなく日本手話でも確かめられ、脳の「言語地図」が次第に明らかになってきています。講義では、脳に刻まれた言語の「生得性」を正しく理解した上で、後天的に脳に保存される言語の記憶と記録について考えてみましょう。
- 講師紹介
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- 酒井 邦嘉
- 東京大学 大学院総合文化研究科 准教授、理学博士。 1992年、東京大学 大学院理学系研究科 博士課程修了後、東京大学 医学部 第一生理学教室 助手。1995年、ハーバード大学 医学部 リサーチフェロー、1996年、マサチューセッツ工科大学 客員研究員を経て、1997年より現職(助教授・准教授)。2002年に第56回毎日出版文化賞(中公新書『言語の脳科学』)、2005年に第19回塚原仲晃記念賞を受賞。研究分野は、言語脳科学および脳機能イメージング。言語を通して人間の本質を科学的に明らかにしようとしている。
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酒井邦嘉「脳機能マッピングによる言語処理機構の解明」 (6.03MB)
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