ディシプリン(学問領域)に
とらわれない思考を身につけたい
第3回 03月07日 刈間 文俊
特別講演:「装う」映画--君はそこに何を⾒るか②
- 講師紹介
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- 刈間 文俊
- 授業風景
刈間先生はまず、東京大学と南京大学が教養教育の分野で20年以上にわたって行ってきた協力と交流の歴史を振り返りました。2001年、南京大学中日文化研究センターが設立され、刈間先生は日方の主任として招聘されました。2004年、南京大学は東京大学教養教育フォーラムを開催しました。2005年、東京大学のEALAI(東アジア教養教育プロジェクト)が設立され、南京大学は南京大学-東京大学教養学フォーラムを開催しました。2006年、東京大学は南京大学で表象文化集中講義を正式に開始し、現在まで続いています。同時に、能楽観世流の国宝級俳優である関根祥六を南京大学に招いて公演を行いました。これは、東京大学の表象文化論コースの特徴の一つであり、理論研究を重視するだけでなく、実践も重視しているため、実際に芸術家を招いてパフォーマンスを行っています。2009年の表象文化集中講義では、歌舞伎の国宝級俳優である坂東玉三郎を南京大学に招いて公演を行い、この伝統を引き継ぎました。その後、2018年から、刈間先生は南京大学の名師招請プログラムに連続して選ばれ、映画に関する教養授業を南京大学で行い、実際に映画を撮影する監督を講師として招いています。例えば、崔洋一、天願大介、滝田洋二郎などがこれに該当します。これもまた、この伝統の現れです。
次に、刈間先生は簡単に自己紹介をしました。彼は中国映画と深い縁のある人物で、中国語は映画を見て学び、これまでに100本以上の中国映画を翻訳し、研究分野も中国映画です。また、陳凱歌や張芸謀など、多くの中国監督と深い友情を築いています。特に陳凱歌監督のすべての作品は、日本での公開時に刈間先生が字幕を翻訳しており、陳凱歌の自伝も翻訳しています。1987年から2018年まで、刈間先生は東京大学大学院総合文化研究科表象文化論専攻で教鞭を執り、中国映画史を研究してきました。2019年に退職してから現在まで、一般財団法人日本アジア共同体文化交流機構の理事を務め、日中文化交流に携わっています。
その後、刈間先生は映画の表象文化論という概念について簡単に説明しました。それは、芸術表象という観点から文化を把握するものであり、芸術表象を媒介とした「文化の分析学」です。これにより、講義のテーマである「映画も『上装』する」、つまり「表象」は一種の「装い」の表現であるというテーマに正式に入りました。
続いて、刈間先生は一連の興味深い例を通じて、このテーマについて語りました。まず、『101回目のプロポーズ』という作品を挙げました。この作品は、東アジアの映像文化が共有される時代の典型的な例と言えます。最初は日本のテレビドラマでしたが、その後、中国と韓国で何度も映画やテレビドラマとしてリメイクされました。刈間先生は、この作品の有名なシーンを通じて、中国、日本、韓国三国の文化的な微妙な違いを詳細に分析しました。その有名なシーンとは、主人公が突然道路に飛び出してトラックを止め、轢かれそうになるシーンです。刈間先生は、中国と日本の男性は弱さを見せて恐怖を表現するが、韓国の男性は弱さを見せず、自分の強さを表現するとまとめました。
次に、刈間先生は映画やドラマにおける人物像の文武分業について話しました。「文」とは、恋愛専門の男性を指し、例えば『花より男子』のF4がこれに該当します。「武」とは、恋愛ができない男性を指し、例えば『亮剣』の李幼斌がこれに該当します。中国のこの文武分業は、実は長い歴史を持ち、伝統的な演劇の影響を受けています。文役の俳優は、京劇の小生に相当し、武役の俳優は京劇の武生に相当し、彼らの間には明確な分業があります。日本の文武分業は中国の強い影響を受け、江戸時代に歌舞伎の「荒事」と「和事」の分業が確立されました。韓国は比較的特殊で、このような文武分業はないようです。韓国人は、良い俳優は文と武の両方のスタイルを兼ね備える必要があると考えているようです。刈間先生は、三浦友和、唐国强、ペ・ヨンジュンという三人の俳優を例に挙げ、俳優が一度ある演技スタイルを確立すると、転型するのは難しいこと、時には長い時間をかけて苦労してようやく転型に成功することがあると説明しました。
その後、刈間先生は東アジアの映像文化における外来要素、つまりアメリカ映画について話しました。1910年以来確立されたハリウッドのパターンで、主人公は戦いが強く、同時に美女の愛を勝ち取ることができます。例えば、1916年から1924年のシリーズ映画『ポーリンの危難』は、英雄が美女を救うというストーリーで、その源流はヨーロッパ中世の騎士物語にあります。
最後に、刈間先生は最近の新しい変化について触れました。それは、どのような男性が強い女性にふさわしいかということです。彼は2015年の『戦狼』と2019年の『都挺好』を例に挙げ、「武役の俳優が文役を演じることで、強い女性にふさわしくなる」という結論を出しました。
(文責:南京大学日本語学科・李斌)
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