南京大学集中講義
Date: 2017/03/13
森元庸介
ひとはなかなかアット・ホームでいられない
日本の文人である室生犀星に「ふるさとは遠きにありて思ふもの」で始まる名高い詩があります。けれども、これを歌ったとき、犀星は自身のふるさとである金沢に帰省している最中でした。ふるさとはふるさとにあってなお遠いもの、いや、ふるさとにあればこそなお遠いものなのかもしれません。この授業ではふるさとの本質的な遠さということをめぐって、近代を画する「移動」の全面化ということの意味に触れつつ、その思想史的な根を聖書の一節「わたくしたちの故郷は天国にあります」をつうじて垣間見ることを試みます。その際、理論的な背景として念頭に置くのはフロイトの「不気味なもの」の概念です。
[講師紹介]

森元庸介
1976年生。
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