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学生募集・東西文明学II(環境と身体2)映画で考える、台湾の生活文化

授業の目標、概要
 
 この科目は後期TLP(トライリンガル・プログラム)の一環に位置づけられている。「東西文明学Ⅰ」、「東西文明学Ⅱ」等の所定単位を取得することによって、後期TLPの修了資格を得ることができる。授業は中国語で行われる。「中国語を学ぶ」ではなく、「中国語で学ぶ」ための講座である。
 
 あなたは「台湾」をどの程度理解しているだろうか。東日本大震災の際に、台湾から莫大な義援金と支援物資が日本に送られたこと、『anan』に代表される雑誌やメディアでの特集などにより、近年、日本人はかつてないほど台湾に関心を寄せているように見える。LCCの就航や台湾の西部を縦貫する新幹線の完成といった交通の利便性の向上とも相まって、台湾への旅行する日本人は年々増加している。しかし、多くの日本人の台湾に対する認識は「日本人に対してとても優しい、『親日』である」、「食べ物が美味しい」といった域を出ない。あるいは「台湾好き」「台湾通」であれば、台湾の歴史や政治を断片的に理解しているかもしれない。その場合においても、台湾の近現代史とは「台湾は戦後国民党の独裁政権に統治され、国民党と一緒に台湾にやってきた外省人と本省人の間で対立=「省籍問題」が生じた。1990年代以後民主化が実現したが、なお国民党の影響が強く残った。2016年の総統選で台湾史上最初の女性総統が誕生し、漸く台湾人の「完全勝利」の時代がやってきた」といった程度のものであろう。あまりにも安易に過ぎる。例えば、「省籍問題」を論じる時に外省人と本省人との対立と言われているが、本省人の中にも福佬系、客家系がいて、外省人なら中国大陸各地出身の人々がいる。また、外省人と本省人の他に、台湾先住民族もいる。すべてのエスニック・グループの背後に独自の文化や生活習慣があり、またそれぞれの文化や生活習慣は共に同じ歴史を歩む中で影響し合い、混淆してきたのである。
 
 本講義は映画を媒介として、戦後台湾の都市生活を解説し、台湾の豊穣かつ複雑な生活文化を掴む糸口を探りたい。1980年代の「台湾ニューシネマ」と呼ばれる作品群以後、台湾映画はそれまでの映画と一線を画し、作風は写実的になり、台湾の歴史と社会を積極的に描くようになった。また、ここ10年程の台湾映画はさらに生活文化や現代に生きる人々の生活を取りあげるようになってきている。本講義では、台湾の人々の生活文化を反映する7本程度の映画を取り上げ、適宜担当教員自身のフィールドワークでの調査内容を加えながら、台湾の人々の日常生活を「住」、「食」、「民間信仰」に焦点をあてて講義する。君たちと等身大の「他者」として台湾の人々を理解する契機となることを期待する。
 
なお鑑賞する映画は変更する場合がありうる。
 
授業計画
1 11月14日(4限) ガイダンスとイントロダクション
2 12月1日(4、5限) 戦後台湾の政治変動と映画:「我們的那時此刻」(楊力州、2016年)
3 12月8日(4、5限) 都市と住生活Ⅰ:「青梅竹馬」(楊德昌、1985年)
4 12月15日(4、5限) 都市と住生活Ⅱ:「陳才根的鄰居們」(吳乙峰、1997年)
5 12月22日(4、5限) 食Ⅰ:「總舗師」(陳玉勳、2013年)
6 12月26日(4、5限) 食Ⅱ:「飲食男女」(李安、1994年)
※実際に台湾の「食」を体験する内容を加える予定。
7 1月5日(4、5限) 民間信仰:「陣頭」(馮凱、2012年)、「父後七日」(王育麟・劉梓潔、2010年)
 
授業の方法
 初回のイントロダクションで台湾の歴史(主に近現代史)や本講義の内容を理解する時に必要な基礎知識を解説する。第2回以後は毎回映画の一部を鑑賞する。そしてそこからどのように台湾を理解できるのかを解説し、受講者全員で討論する。
受講者は毎回鑑賞した映画及び教員の解説、受講者の議論から得られたことを文章にまとめ、次回授業開始時に提出することが求められる。詳細は初回ガイダンス時に説明する。
なお、講義で使用する映画(字幕)及びその他資料は繁体字のものを使用する。
 
場合により定員を制限することがありうる。
 
成績評価方法
平常点(授業への参加度及び「心得」)と学期末のレポート
教科書は使用しない。
 
履修上の注意
どうしても理解できない内容などがある場合は日本語で説明することもありうるが、基本的に中国語で授業を行う。初回ガイダンス時にレベル認定テストを行うので必ず参加すること。当該テストに合格した者だけが履修を認められる。後期TLP修了資格要件については、別途行われるガイダンスで説明する。また、関連する言語科目として「共通中国語」にTLP科目が開設されているため、中国語スキル向上を目指す学生はあわせて受講することが望ましい。


関連ホームページ
http://www.lap.c.u-tokyo.ac.jp/ja/

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