特設講演
Date: 2017/03/15
伊藤徳也
周作人が「生活の芸術」を提唱するまで
中国で「生活の芸術」と言うと、生活を楽しむための様々な技術、秘訣のことを、若干の人生哲学を含めて指すことが多い。『生活の芸術』という名の林語堂や梁実秋の本があるが、いずれもその大元には周作人の「生活の芸術」論がある。周作人は「生活の芸術」を提唱するまでに、「芸術」、「生活」、「美」、「自然」、「現代」、「頽廃」といった概念をよく吟味した。「芸術」は「美術」とイコールではないし単なる「技術」とも違う。「生活」は生物学的人生観に基礎付けられた「生活」であるし、「自然」、「現代」、「頽廃」それぞれ多様な解釈の中から、彼は提唱するに値する考え方を丹念に選び取った。そうして彼が提唱した「生活の芸術」の思想的基礎に思いを致すことは、 私たちにとっても有意義である。「家」というテーマに即して言えば、彼が「生活の芸術」を提唱するに至った背景の一つに兄魯迅との決別という周家の中のプライベートな事件があったことも確かである。
[講演者紹介]
伊藤徳也
伊藤 徳也
核になる専門は近現代中国文学、特に周作人、林語堂、張競生、魯迅。現代中国(戦前から現在まで)のモダニティの諸形式を、それぞれのデカダンス(頽廃)の様態に即して分析したいと考えている。院生時代(1987-89年)に1年半、2006年度に1年間、北京に滞在。
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