『排泄』
概要
生の営みの中で、欠かすことのできないものの一つとしての「排泄」。食物の摂取と並んで個体を他者に向かって否応なしに開くこの契機は、「自律」を旨とする近代的人間の理念の枠組みのなかでは二次的な地位に追いやられていた。こうした主要な活動の意図されざる/望まれざる副産物の産出が表だって問題にされてこなかった背景には更に、その自然性の認識がある。すなわちそれは「自然に任せることで」「自然に」解決するはずのものと考えられてきたのだが、今日われわれは、その自然性がさまざまな水準で揺るがされる事態に直面しているように思われる。そもそも人間 がその「自律的」な存在に達する前後の時期に、一定の――「自然」な――仕方で解決されるはずであったこの問題は、現代においては「発達障害」や「介護」といった異なった文脈に組み込まれて提起されている。またマクロな水準に目を転じてみれば、人間の活動から生まれる排出物の問題が――二酸化炭素やゴミ、さらには核廃棄物にいたるまで――現代ほど真剣に問われた時はなかった。これらの問いは、しかし同時に、人間の「自然」と「理念」を根底から考え直すようわれわれに迫っている。以上のような観点から、本講義では狭義の「排泄」から出発しつつ、さまざまな水準と場面における排出や排除の問題を通覧することで、近代的な人間観を問いに附すための視座を提供することをめざす。
日時
2013年12月17日(火)6限
教室
情報教育棟4階 遠隔講義室
講演者
福士由紀(総合地球環境学研究所/中国近現代史・東アジア医療社会史) 「近現代東アジアにおける排泄・健康・環境」
刈間文俊(東京大学総合文化研究科/中国映画史) 「中国映画における排泄 ――なぜ旨い酒ができたのか」
本講演は、2014年3月に南京大学で行われる南京大学集中講義『排泄』と連携しています。テレビ会議システムによって南京大学へ中継し、東京大学と南京大学で同時開催します。3月の集中講義の中から、核となる文理2つのトピックスについて「排泄」について論じ、日中の学生の皆さんに共に考え、議論してもらいます。
また、本講演は南京大学集中講義『排泄』への派遣学生選抜を兼ねております。同講義への参加を希望する方は本講義に参加し、レポートを提出して下さい。選抜された方は2014年3月9日~16日或いは16日~23日の期間に、南京大学での集中講義及び学生討論・共同研究に参加することができます。前期課程から大学院生まで、全ての学生の聴講及び選抜への参加を歓迎致します。
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