ディシプリン(学問領域)に
とらわれない思考を身につけたい

学術フロンティア講義
【Aセメスター】
2014年度「排泄」

2015.Sep.16

概要

生の営みの中で、欠かすことのできないものの一つとしての「排泄」。食物の摂取と並んで個体を他者に向かって否応なしに開くこの契機は、「自律」を旨とする近代的人間の理念の枠組みのなかでは二次的な地位に追いやられていた。こうした主要な活動の意図されざる/望まれざる副産物の産出が表だって問題にされてこなかった背景には更に、その自然性の認識がある。すなわちそれは「自然に任せることで」「自然に」解決するはずのものと考えられてきたのだが、今日われわれは、その自然性がさまざまな水準で揺るがされる事態に直面しているように思われる。そもそも人間がその「自律的」な存在に達する前後の時期に、一定の――「自然」な――仕方で解決されるはずであったこの問題は、現代においては「発達障害」や「介護」といった異なった文脈に組み込まれて提起されている。またマクロな水準に目を転じてみれば、人間の活動から生まれる排出物の問題が――二酸化炭素やゴミ、さらには核廃棄物にいたるまで――現代ほど真剣に問われた時はなかった。これらの問いは、しかし同時に、人間の「自然」と「理念」を根底から考え直すようわれわれに迫っている。

以上のような観点から、本講義では狭義の「排泄」から出発しつつ、さまざまな水準と場面における排出や排除の問題を通覧することで、近代的な人間観を問いに附すための視座を提供することをめざす。

2014年度前期課程冬学期に開講するテーマ講義です。

日時:水曜5限(10月8日~1月21日)
場所:駒場キャンパス 情報教育棟4階 遠隔講義室

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