ディシプリン(学問領域)に
とらわれない思考を身につけたい

学術フロンティア講義
【Aセメスター】
2016年度「色」

2023.Sep.27

概要

「Aアー 黒、Eウー 白、Iイー 赤、Uユー 緑、Oオー は青」と詩人は言った。「色」はものとして存在するわけではない。幸せをもたらす「緑の光線」は緑色の何かから発しているわけではないし、晴れた日に戸外の影が青みがかってみえるとしても、そこに青い何かがあると考えるのは間違っている。しかしそれは「色」の現象が恣意的であるということを意味するものではない。その知覚はむしろ、精妙な物理的、身体的、心理的、さらには文化的プロセスに従うものなのだ。その結果として、同じものが異なった色に見えたり、別の感覚が色の知覚をもたらしたり(「共感覚」)といったことが起きることもまれではない。その一方で、そうして私たちが経験するにいたる「色」は、私たちの生に深く入り込み、これをさまざまな形で規定するものでもある。それは私たちの気分と密接に結びつき(この文脈でゲーテの 『色彩論』ははずせない参照先だ)、社会的な身分の表現手段となり(西洋文学に例を求めれば『赤と黒』、また歴史であれば「冠位十二階」制度など)、さらには深刻な社会的分断の原理となる(人種差別!)。また日本文化の中で「色」は強く「欲」の次元と結びついた語彙でもある。それは「欲」をそそる何かをさすばかりでなく(「色欲」「色気」など)、やがてそうした「欲」の向かう現世的な事物の総体を指す表現となるだろう(仏教の「色即是空」)。本講義ではこうした広大なひろがりをもつ「色」の現象に、文理の領域にまたがる分野の教員によるリレー講義のかたちでアプローチする。

2016年度Aセメスターに開講するテーマ講義です。

日時:水曜5限(9月28日~1月11日)
場所:駒場キャンパス5号館524教室 *左記教室に教室変更しました

【日程】

第1回 9月28日  馬場紀寿先生
第2回 10月5日  馬場紀寿先生
第3回 10月12日 小森陽一先生
第4回 10月19日 三浦篤先生
第5回 10月26日 村岡ゆかり先生
第6回 11月2日  村岡ゆかり先生
第7回 11月9日  鳥井寿夫先生
第8回 11月23日 鳥井寿夫先生
第9回 11月30日 伊藤啓先生
第10回 12月7日 伊藤啓先生
第11回 12月14日 藤原晴彦先生
第12回 12月21日 藤原晴彦先生
第13回 1月11日  まとめ

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