ディシプリン(学問領域)に
とらわれない思考を身につけたい

第1回 03月03日 原 和之

発達のなかの「排泄」 ――精神分析理論の観点から

2014/3/3 - 3/4

19世紀末にヒステリーの治療法として「精神分析」を考案したウィーンの医師ジグムント・フロイトは、ヒステリーのさまざまな症状の原因として、はじめ主体が大きなショックを受けた経験の回想、いわゆる心的外傷(トラウマ)を考えるが、やがて一般に無意識の欲望こそが病を引き起こすのだと考えるようになる。この欲望は、症状を生み出し支えると同時に、それを解消しようとする治療的な努力に対する抵抗としても現れてくるが、分析技法についての議論が深められていく中でこの後者が問題になるにつれて、そもそも人間の欲望がどのように形成されてゆくのかという理論的な課題が浮上してきた。分析理論においてこれは、さまざまなものへのさまざまな欲望(ないし「リビード」)が人間の成長の過程でたどる変転の過程を論ずる、いわゆる「リビード発達論」として展開されてゆく。その初期の段階には人間の基本的な欲求が位置づけられるが、ここで「排泄すること」は「食べること」とならんで重要な契機として組み込まれていた。

本講義では、精神分析における欲望をめぐる議論の中で、排泄にかかわる諸契機がどのように位置づけられているかを概観する。主たる参照先は、ジグムント・フロイトのほか、20世紀イギリスの精神分析家メラニー・クライン、同じく20世紀フランスの精神分析家ジャック・ラカンらの所論の予定である。

講師紹介

原 和之
東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻多元世界解析講座准教授。 東京大学から同大学院で地域文化研究(フランス)。パリ第一大学、パリ第四大学で哲学を修める。パリ第四大学博士(哲学史)。電気通信大学 専任講師・助 教授を経て、2004年4月より東京大学大学院総合文化研究科助教授(准教授) (地域文化研究専攻)。著書に『ラカン 哲学空間のエクソダス』(講談社)など。
授業風景

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