ディシプリン(学問領域)に
とらわれない思考を身につけたい

第7回 03月27日 森山 工

社会人類学の視点から見た「排泄」

2014/3/27 - 3/28

社会人類学は、ある特定地域での長期間にわたる現地調査(フィールドワーク)にもとづいて、その地域の人々の生活のあり方や社会組織について主に研究する学問分野です。この講義では、まず社会人類学という学知の成り立ちと、その方法としてのフィールドワークについて概説し、この学問分野への理解を深めていただきます。その上で、「排泄」というテーマに、社会人類学の立場からどのように接近できるのかを考えます。「排泄」というのは、きわめて身体的な現象ですから、一方でこれが身体論と交差することは言うまでもありません。しかしながら、生物学的な身体に限定せずとも、ある種の社会集団を想定した場合に、そこに何ものかが外部から「摂取」され、内部において「消化」され、外部へと「排泄」されるという一種の社会的な動態を考えることもできます。そしてまた、「排泄」されたものが、別の意味づけを与えられて「回収」され、「再利用」されるプロセスも考えることができます。この講義では、「排泄」ということばを、文字どおりの生理的な意味で把握すると同時に、比喩的な意味にまで把握の領域を広げ、個人から社会へとわたるさまざまなレベルにおいて「排泄」のあり方を考察したいと思います。

講師紹介

森山 工
総合文化研究科地域文化研究専攻教授。 広島市立大学専任講師、助教授、東京大学総合文化研究科地域文化研究専攻助教授、准教授を経て、2012年より現職。マダガスカル社会の文化人類学的研究を中心に据えつつ、その関心を植民地問題や広域フランス語圏文化全体にまで広げながら研究を行っている。研究領域として、(1) マダガスカルの特定地域におけるフィールドワークに基づいた文化人類学的研究、(2)マダガスカル文化研究に依拠したマダガスカル語学の研究、(3)マダガスカルとフランス(ヨーロッパ)との歴史的関係を踏まえた、より射程の大きい地域文化研究、(4)マダガスカル研究およびフランス=マダガスカル関係研究を基盤とした、文化人類学の一般理論への貢献であり、文化人類学および地域文化研究の手法によって得られたマダガスカルの文化と社会に関する緻密な資料群を、文化人類学における一般的な射程を備えた理論枠組みへと練り上げようとするもの、(5)文化人類学の学的方法にかかわる研究がある。

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