ディシプリン(学問領域)に
とらわれない思考を身につけたい

第3回 10月29日 清家 弘治

生物の排泄物 ――時空を超えた生命活動のサイン

排泄――それは生命活動に他なりません。排泄物とは、その作り主の生き様を表すサインと言えます。排泄物を調べれば、その生物が何を食べているかが解ることはもちろんですが、それ以外にも多くの事――たとえば作り主の行動パターンや生息域などの情報を得ることができます。したがって、排泄物はその作り主の生態を知るうえで、貴重な「状況証拠」と言えます。また、環境中に放出された排泄物は消えてしまうのではなく、他の生物に利用されその構成物質は生態系内で循環します。なお、排泄物が地層中に保存され化石となることもあります。その場合は、化石となった排泄物を調べることで、太古の昔に生きていた生物の生態を知ることができます。つまり、排泄物とは時空を超えて、生物について多くの事を我々に語ってくれるのです。

本講義では生物の排泄行動および排泄物からどのような生物情報を得ることができるのか、という点について海洋生物学および古生物学の視点から紹介します。

講師紹介

清家 弘治
東京大学大気海洋研究所助教。 1981年生まれ。博士(理学)。2009年、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。2009年~2012年、日本学術振興会特別研究員PD(研究従事機関:東京大学および独立行政法人港湾空港技術研究所)を経て2012年7月より現職。専門は海洋生物学および古生物学。フィールド調査で海底に棲む生物の巣穴や這い痕を解析し、それらの生態についての研究を行っている。船に乗ると必ず船酔いするものの、航海調査や潜水調査が大好き。
授業風景

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コメント(最新2件 / 14)

てつ    reply

今回は、リアルな排泄物がテーマだったため、話が具体的で理解しやすかった。排泄物からは、時空を超えた生命活動のメッセージ、また、現存していても生活状況を調べにくい生物の生命活動情報を受けとることができるようだ。
排泄物を一般の人はただの汚いもの忌み嫌われるものとして認識してしまいがちだが、環境が変われば有機物輸送の重要な媒介、生物を多角的に知ることができる研究対象になり得て興味深いと思った。

なな    reply

最近がなぜ光るのかという疑問が提示された際、私はまず、光ると敵に見つかってしまうので細菌にとって不利益なのではないかと考えました。しかし、逆に、食べられることによって生き長らえるということは、発想の範囲外で、興味深かったです。深海魚の中には光ることによってエサをおびきよせるものもあるので、その性質を利用したものなのだと納得しました。
また、陸上における糞化石が生命史上重要なことは知っていましたが、海洋における糞化石の重要性、また糞化石の中に糞化石があるという高度と言っていい程の再利用について、新たに学びました。化石は地中・海中に含まれていると思うのですが、人がそれを発見する際それを化石として認識することは困難なのではないでしょうか。

せし    reply

リアルなふんの話題ということで身構えてしまったが、化石で過去の食物連鎖がわかるのが興味深かった。
津波でゴカイのふんが流れてゴカイが一時的にいなくなったことがわかるというのは、よく気付いたなあと思った。

taro    reply

排泄物を通して違う時代・空間の環境や生態系が感じられ、ロマンがあって面白い講義だった。他の生物の体内に入るために水中で発行する排泄物があると言っていたが、視覚が退化している深海の生物たちがそれを感知できるのかどうかは気になった。

post    reply

まず、深海の生物がフンを摂取して生きているということ、つまり生物ポンプに関する話は非常に斬新で驚きだった。
また、大昔の生物のフンの形は私たちが普段想定する形以外に、非常に多様なものがあり、ユニークでアーティスティックとさえ思えた。実物が見られたことで、さらに興味が深まった。
通常あまり良いイメージを持たれない排泄物にしか伝えられない情報があることがわかり、今まで以上に狭義の意味での排泄物を様々な視点からとらえられ、非常に有意義な講義だった。

たこ    reply

今回は純粋に生物学的な排泄のお話だった。糞化石の生物学的、考古学的な重要性がよく理解できた。糞によって、ゴカイの移動過程が把握できるというお話はとても興味深かった。今回は調査結果や研究内容も面白かったがそれ以上に、深海生物の排泄物の化石や、ゴカイの糞の痕跡採集などの調査・採集方法にも大きく感心した。

きお    reply

 同じ土の中に住む生物で似たような形の生物でも、深海の生物の排泄は幾何学的な模様でされるのに対し、浅いところのゴカイはランダムな動きで排泄をしていました。また、同じゴカイでも種類によってモンブランのようなふんをするものもおり、排泄の多様性を感じ面白いと思いました。
 ふんの中の方が保存状態が良いことがあり、食べた動物の筋繊維まで見えるというのには驚きました。ふんを調べるとそれ以外を調べたのではわからないこともわかることがよくわかりました。

うひろ    reply

排泄物の中の繊維や排泄物の形から、生物の容貌を垣間見ることができるというのは大きな驚きであった。排泄物は、生物の死骸と同じくらいに、後世に生物の情報を残すのだ。排泄物や死骸はともに、後世にその生物の情報を伝え、そして他の生物の栄養源になりうるという点において、ともに共通点が多いように感じられた。
また、今回の講義と論旨はずれてしまうが、生物の情報を後世に伝えるという点では、人間が残した文明の遺産も、「排泄物」という観点から考察できるかもしれないと感じた。

いとう    reply

フンの化石というものを今まで見たことがなかったので非常に興味深かった。やはり実際に実物を手にとって見てみるというのは良い刺激になったかと思う。ただただフンがあるのではなく、そこにはその生物の暮らしぶりや環境など様々な情報が込められているのだと実感させられた。今後自分がどのように関わっていくのかは分からないが、授業で学んだことをどこかで活かせたら良いと思った。

あつし    reply

今回の講義では、排泄物から様々な生物の情報が手に入ることがわかり、驚嘆の気持ちで胸がいっぱいになった。数万年後に自分の排泄物から自分の詳細が後世に伝わるかもしれないと考えると、興奮を隠せないです。

トミー    reply

フン中で発光することで深海生物に食べられて、またフンとして出されるという方法で住処を確保する発光細菌の工夫に感心した。また、フンには有機物が多いため内部のものの保存状態が良いことや、ゴカイの移動が排泄痕で分かることなどを知って驚いた。

po-nomo    reply

今回は字義通り”排泄物”をテーマとする授業でしたが、普段の講義で扱われないような海洋・海底の生態に迫る興味深いものでした。生態系と言われると階層的な食物連鎖の構図を思い浮べがちですが、連鎖の外に排出される糞粒を糧とする生物の存在は想定外でした。また海底生物の糞粒をさらに食物とする生物の存在、排泄物の連鎖とも言えるあり方はとても面白かったです。

たか    reply

生物の糞から読み取れる情報の多さに驚きました。糞を分析することで排出した主体の生活が知れるのは想像の範疇でしたが、被食者側の生存戦略や当時の生態系、さらにはただ糞があること自体も有益な情報として読み取ってしまう姿勢に感動しました。

かずき    reply

単純なことですが、今深海底に生きる生き物について謎が多く残っていることに驚かされました。(今生きる)生物の形もわからず排泄物からその生活を探る姿勢は、化石を探り過去のいきものを調べることにより近いのかもしれません。

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