ディシプリン(学問領域)に
とらわれない思考を身につけたい

第1回 09月26日 川島博之

中国の食料生産と農民問題

中国の食料生産について概説する。また、農民戸籍問題を含めて中国の農民が置かれた状況について述べる。米中貿易戦争に関連して、中国が輸入する大豆の関税をアップする問題についても触れたい。

講師紹介

川島博之
昭和28年11月29日生。東京大学大学院農学生命科学研究科・准教授。  略歴:昭和58年3月 東京大学大学院博士課程修了(工学博士),昭和58年4月 東京大学生産技術研究所・助手,平成元年10月 農林水産省農業環境技術研究所・主任研究官,平成10年12月 東京大学大学院農学生命科学研究科・助教授  主な著書:「食料生産とバイオマスエネルギー―2050年の展望」東大出版会(2008年)、「食糧危機をあおってはいけない」文藝春秋(2009年)、「日本の食料戦略と商社」(監修)東洋経済新報社(2009年)、「農民国家・中国の限界―システム分析で読み解く未来」東洋経済新報社(2010年)、「食料自給率の罠」朝日新聞出版(2010年)、「食の歴史と日本人―もったいないはなぜ生まれたか」東洋経済新報社(2010年)、「作りすぎが日本農業をダメにする」日本経済新聞出版(2011年)、「電力危機をあおってはいけない」朝日新聞出版(2011年)、「戦略決定の方法」朝日新聞出版(2012年)、「データで読み解く中国経済」東洋経済新報社(2012年)、「世界史の中の資本主義、エネルギー、食料、国家はどうなるのか」東洋経済新報社(2013年)水野和夫と共編著、「データで読み解く中国の未来」東洋経済新報社(2015年)、「戸籍アパルトヘイト国家、中国の崩壊」講談社α新書(2017年)  賞罰:昭和63年3月 日本水環境学会論文賞(広瀬賞受賞)受賞、 平成9年11月 システム農学会論文賞受賞、 Taylor & Francis and The Remote Sensing Society’s Best Letter Award、1998年9月  政府委員:平成23年度 提案型行政仕分け委員(農林水産業担当)、 平成24年度 行政仕分け委員(農林水産業担当)
参考文献

川島博之『「作りすぎ」が日本の農業をダメにする』(日本経済新聞出版社)

関連サイト

東京大学農学部・大学院農学生命科学研究科 農学国際専攻 国際開発環境学講座 国際環境経済学研究室 http://www.ga.a.u-tokyo.ac.jp/p_kawashima.html

授業風景

2018年9月26日の学術フロンティア講義では原和之先生からの簡単な挨拶の後、農学生命科学研究科の川島博之先生を迎え、「食料」と「農民」の2つをキーワードに、現代中国の農業・農民の現状やそのデータから読み解ける様々な問題を講義していただいた。

東アジアの共通した「食」のイメージは穀物を加工・調理した主食+副菜というスタイルだが、近年目覚ましい経済成長を遂げた中国においては食生活が欧風化し、肉類の消費、ひいては飼料作物の需要が伸び続けている。人口大国・中国での需要を満たせる飼料供給が可能なのか、20年以上前から懸念を示されていたが、中国は(日本のようにトウモロコシではなく)大豆の大量輸入によりこれを賄った。

大豆の栽培とともに20世紀の農業の躍進、ひいては世界人口の増大を支えたのが化学肥料(特に窒素肥料)技術の進歩であり、その恩恵は人口が増え続ける現在の世界において飢餓をほぼ無くし、たんぱく質に富む大豆が効率の良い飼料となったこととあわせ、肉類の生産を大々的に許容するまでになっている。

中国は自国の肉類生産を支える大豆飼料の約半分を米国から輸入しているが、中国はまた米国に対し安価な労働力で組み立てた機械類を輸出してもいる。この売り上げが経済成長を支えてきたのだが、米国の現トランプ政権はこの貿易関係を不均衡なものと考え、中国からの輸入品に高率の関税をかけている(経済学的には誤った考えだが、それが通用しないのが政治である)。これに対し現在の中国は(かつての日本のように生産拠点の海外移転という手段も使えず)米国産大豆への報復関税という(ほぼ意味のない)手段に出ざるを得なくなっている。これが目下の米中間貿易摩擦の実態である。

人口支持力の高い米によってアジアは莫大な人口を持つことになったが、これは都心部の住居費の高騰というアジア共通の現象を生み出している。さらに技術の進歩によって農業に労働力が必要でなくなると、中国では余剰の労働力が大量に海岸部に流入した。これが現在2.3億人に上る「農民工」である。中国では戸籍が「農民戸籍」「都市戸籍」に明確に分かれ、それにより収入を大きく規定できる(かなり問題のある)制度もあって、彼らが安価な工場労働力となることで(高度経済成長期の日本と同様の)成功モデルを得た。しかしこの(成功し過ぎた)モデルが世界経済の流動化をもたらしてもおり、この成功モデル自体も、農民工が次世代に教育を通じての階層移動を望んでいるために、自壊の危機にさらされている。

中国の「農」から世界の問題を読み解く先生の講義は、その親しみやすく軽快な語り口とも相まって、非常に興味深いものと受け止められていた。ほとんどの学生が近々直面する就職事情にも折に触れて言及していたので、将来を考えるきっかけにもなったであろう。といっても、成功できる/安泰な身の振り方についての明確な答えを与えられたわけではない。それは自らが考え、世界の流れを読み、判断していかなければならないことなのである。

(文・永嶋)

コメント(最新2件 / 37)

ren9muni    reply

素晴らしい授業でした。元々農業には特に目立った関心もなく、取りこぼした単位を回収する程度の気持ちで受講を決めた自分ですが、今回の授業ではメモを取る手が105分間止まりませんでした。特に、川島先生の「アジアの農業から自分の将来を考えるのは有益だ」というお言葉に感銘を受けました。というのも、自分の将来について思いを馳せる時、最近は「この激動の時代に、今の常識は将来どうせ通用しないのだから未来を予測できる力をつける」ことを念頭に置くようにしています。あくまでも昨今話題の「未来予測」「AI」「シンギュラリティ」といった単語を見聞きして影響を受けただけですが…。それもあってか進学先も法学部ではなく文1から社会学専修の方に進む道を選びました。官僚や弁護士なんかになるより、社会を広く相対的に見られる力をつけたいと思った次第です。そんな僕にとって今回の授業はまさに聞きたかった内容、しかも「農業」という自分が今まで持ち合わせていなかった視点から考察するもので、目からウロコが落ちるばかりでした。貴重な体験、ありがとうございました。余力があれば先生の著書も読ませていただきます。川島先生の授業が今回きりなのが非常に残念です。

rakim1099    reply

感想:中国の食糧問題および農業問題という観点から世界の流れを見る、といった講義であった。中国の食糧生産システムだけでこれほど世界情勢をうまく読み解けるというのはとても興味深かったし、中国のプレゼンスの大きさを改めて認識させられた。

また講義においては、分野横断的な内容や時事的な問題に絡めた説明がなされ、大変に興味深かった。具体的には、中国の農民工システムで多くを説明された。日米の貿易摩擦と比較しつつ、このシステムが日米に与えた影響を語っておられた。

一番印象的だったのは、現在の米中の関税についての対立の結果をさらりと予測されたことだった。日頃漠然とニュースを見ているだけでは不十分であり、よく勉強すればニュースひとつとっても色々なことがわかるのだ、と思い知らされた。

意見:大豆と化学肥料が農業生産を変えた2大革命だ、として各々説明をされていた。時間の関係上、科学的な説明は軽くなされただけであったが、この点をもっと掘り下げてみると興味深いのではないかと思った。

ilovefood7    reply

主に中国に関して、食料供給や農民、つまり農がここまでよ国際的な影響を持っているという事実に感銘を受けた。特に、中国が家畜飼料の為の大豆を米、アルゼンチン、ブラジルから輸入していることに関連した米中間の貿易戦争の詳細な状況や、中国共産党による戸籍制度ゆえに存在する低賃金労働力農民工の持つ世界へのインパクトの大きさについてのお話はとても興味深かった。

yokamoto9858    reply

今まで中国の経済発展のメカニズムについて漠然とした認識しか持っていなかったがそれが農民戸籍制度と外国資本に支えられたものであるということができた。またそれと同時に現在中国国内で進行しつつある農民工による社会的な地位を向上させようとする動きなどによってもたらされる農民工の減少が世界経済に波乱を引き起こす可能性を持っているということを恐ろしく感じた。

leo@food    reply

とても興味深い内容でした。今現在中国とアメリカの貿易摩擦が過激になっているなか、今回の授業でその根底にある中国の社会構造について触れ、ニュースをさらに一歩踏み込んで見れるようになったと思います。中国の経済成長はまさに農民工と呼ばれる人たちが支えてきたといっても良いのですがいずれ彼らも自分たちの地位から脱却してより高い賃金を要求するようになるでしょう。それが中国の成長が止まるときでもあり、中国が真の先進国への仲間入りを果たす時なのでしょう。ですがそういったモデルを新興国が次々と採用していくと、我々日本のメーカー及び農業分野における国際競争力はさらに低下していくことは明らかでしょう。

tomii1227    reply

経済学で正しいとされていることが実際の政治ではあまり起こらないということを学んだ。戦後、日本は高度経済成長を経験し数十年後、中国もこれに追随するように著しい発展を遂げた。日本の食生活の肉食化を可能にした過程とは異なる形で中国の食生活・対外関係は進み、古い型で全てが上手くいかないように、今まさに時代は数十年の大きな流れから転換し始めていると感じた。農民工から考える中国を中心としたアジア経済もたいへん面白く、興味深かった。

iwa1023    reply

僕は、今回の講義を聞いて、食のあらゆるものに対する関わり方の広さや深さをとても感じました。
講義内容は多岐に渡っていたものの、すべて中国の食生活や農業を中心に考えることで筋が通って理解できる、ということを聴講しながら身をもって感じることができました。特に、中国の農民戸籍制度が工業とトランプ政権の貿易摩擦につながっていく部分や、アジアの稲作とアジアの都市の人口密度との関係が興味深かったです。また、先生が講義のどの部分でも「システム」に着目して話してくださったため、それは確かにそうなるなあとひとつひとつ納得しながら話を聞くことができました。
今回講義を聞いて僕が持った意見は、利益が大きく儲かるシステムにはどこかで犠牲やしわ寄せが生まれるということです。中国の農民戸籍と農民工の話で、中国は大きな利益を得たものの、農民工は実は地位を固定され安い給料で働かされているというのはその一例であり、今後もそういったモデルが出てくるのではないかと思いました。

横田知子 tomoko0422    reply

「食」というテーマから、中国の経済の話を聞くことができとても興味深かったです。主食という概念が東アジア特有のものであるというのも初めて知りましたし、そこから中国の高度経済成長に伴う輸入の話になり、農民工の話になって近年の世界経済の話へと移り変わって行き、新たな知見が得られました。特にわたしは中国の農民工の話が衝撃的でした。中国に工場を作って安い労働力を使って商売をするという形式は私の中でプラスのイメージがあったので、それこそが現在東芝やシャープなど日本の大企業の失墜を招いている一因だと聞き、驚きました。また、すでに学歴を利用した階層移動にも限界がきているという言葉も刺さりました。東大を目指しているときは、周りの大人たちに「いい学歴を持つと将来安泰である」などとよく言われましたが、入学してからその言葉は確実に事実に反していると思っていましたし、そのような言葉に違和感を抱いていました。今回の講義はその違和感を整理するのにとても役に立ちました。今頂点にある分野や企業に目が行きがちで、目先のものにとらわれがちな私ですが、世界の大きな流れというものを勉強することでつかんで行きたいと思うきっかけになりました。

ilovefood2    reply

僕が今回の講義で特に興味を持った点は、中国において農業の発展が結果として経済発展をもたらしたということです。
「中国の経済成長は安価な労働力によって支えられている」「世界中の企業が安価な労働力を求めて中国に工場を置いている」などとしばしば耳にしますが、その安い労働力を支えている農民工という存在はほとんど知られていないように思います。農民工というシステムは、安価な労働力を獲得できる農民工の雇用者や彼らのおかげで経済成長を遂げる中国という国家が利益を得るのはもちろん、農民工自身も農村にいるよりも高い給料を稼ぐことができるという点で、中国国民全員が得をするシステムであるというように感じられます。しかし、その背景に農民戸籍と都市戸籍という2種類の戸籍を使った二重支配体制があることを忘れてはならず、農民工のシステムは階層分化によってもたらされた農民と都市の貧富の差という現状を利用した搾取であると思います。
なので、僕は真に改善すべきは中国という国が抱える二重支配体制であると思います。実際に胡錦濤政権以降、農民戸籍の都市戸籍への切り替えなど、支配体制への変革が図られています。それによって労働者の不足および賃金上昇が起き、中国経済に影響を与えていますが、中国は大国として経済発展よりも搾取構造改善を優先すべきだと思いました。

Saki0204    reply

私は、今回の講義のうち後半にあたる農民についての話題に興味を持った。中国で都市戸籍と農民戸籍が存在するというのは、外から見るとただの差別政策でしかないが、この区別こそが中国を大きく成長させる一つの要因であったと考えると一筋縄ではいかない問題である。中国人は勤勉で向上心が強いと言われている。農民工の人々は今の低賃金労働についてどのように考えているのだろうか?共産主義のもとにある中国では、民主主義である日本のように労働運動などによって賃金の底上げを求めるとは考えにくい。また、徐々にでも農民工の賃金が上昇していけば、資本を投資している先進国はより新しい市場、例えば中国の人口を上回りそうなインドに投資先を変更したり、工場を移したりするため、中国全体にとって不利になる可能性もある。今後中国がどのような選択をしていくのか注目しておくことは、日本の今後の農業戦略を考えていく上でも重要であるだろう。

yariika26    reply

現在、中国の農民工が世界トップの生産性を持っているという内容が印象的だった。そして、農学系に進んで日本の、ひいては世界の食をよりよくしたいとぼんやり考えていた私は、今回の講義でその考えの甘さを痛感した。もっと世界の動向を観察して、農学に進むとしても柔軟に行動していきたい。

take@food18    reply

今回の講義を受けて、中国の食料事情から世界全体の食料事情の歴史と現在を大まかに捉えることができ、中国における農民の扱いから世界にある国境を超えた弱者からの搾取の構造とその歪みの一端を知ることができた。歴史に鑑みるに弱者からの搾取という大きな流れは長い間変化していないように思える(もちろん呼び方や内部の構造は変わっているが)。倫理や道徳に訴えずに、搾取以外の構造をデザインすることはできないだろうか? できるとしたら、それはどのような形を取るのだろうか?

Umay9002    reply

<感想>
・農業技術が発達すればするほど農業従事者が困窮していくのは皮肉な話だと思った。
・中国の戸籍制度では「農民戸籍」と「都市戸籍」に人民が分けられるということを知って驚いた。またこの制度について先生が「現代の奴隷制度」とおっしゃっていたのが印象に残った。
<意見>
現在の農民工の子供世代が高等教育を受け、管理職になる人が増えるなど社会的地位が向上すると、相対的に地位が低下し競争相手が増えることとなる都市戸籍の人々との摩擦が起こりうると思った。

fuya0469    reply

ご講義ありがとうございました。急激な発展を遂げた中国の存在がとうもろこしの価格を急騰させ、世界の食糧経済を混乱させるという予測がされたなか、大豆の飼料穀物としての利用、化学肥料の進化が大きくその予測を動揺させたというお話がとても興味深かったです。また、中国における差別的戸籍制度に基づく農民工の存在が自分の将来に迫る就職活動に結びつくという事実に関しましてもこれまで考えが及ばなかったお話で、非常に新鮮でした。以前まで私は「歴史は繰り返す」ものであるという認識を持っていたため中国が急激な経済成長を果たしたのも、当然相違する部分はあれど、過去の日本の姿を重ねて見ていました。さらに未来においてもまた同様に新興国が登場して…という一連の流れが起こるのであろうという短絡的思考に陥っていました。しかし、日本、中国の経済成長のモデルケースの性格も明らかに異なるものであり、また中国ほどの人口、面積を含め大規模な国家は他に存在せず、現在の状況の特異さは、また繰り返されるといったような甘い認識では捉えられないものであると感じました。世界情勢に目を向け、様々な角度からその姿を正しく認識できる力を養っていきたいと思います。

ayane0212    reply

学術フロンティア講義「食」1回目のテーマは「中国の食糧生産」ということで,私は高校の社会科的なアジアの農業についてのお話なのかな,と勝手に想像していましたが,講義は想像とは全く違って,中国の食糧生産やその背景にある文化的な制度による日本の重工業への影響,現代の大学生の大きな関心ごとの1つである就活に絡めた面白いお話など,「食」という1つのテーマから本当に幅広い内容を聞くことができてとても満足です。
最近の米中の貿易摩擦はネットやtwitterのニュースでも頻繁に流れてくるホットな話題であるが,その原因として「大豆」が絡んでいることは初めて知りました。人間は一年間で自分の体重ほどの肉を食すらしい。(中国では60kgほどとアジアの中でも多くなった,というお話だったように思う)中国の人口は13億人であり,日本と比べても人口だけで食料生産,貿易の規模は大きい。中国では中国人が肉を食べるようになり,豚や牛の需要の増加に対応しようと豚,牛の餌として大豆を年間1億トンも輸入している。そしてその多くを米国から輸入しているのだ。このようなことから,関税の問題なども含め,大豆が米中の貿易摩擦の原因の1つになるのだ,ということがわかります。こうやって普段何気なく見ているニュースの深い背景を大学の授業で知る機会を持てたのは本当に嬉しいことでした。
また,中国の「農民戸籍/都市戸籍」の問題についても,恥ずかしながら初めて知りました。13億人が好き勝手に居住地域を移動できたら大変なことになるということは理解できるが,「農民戸籍」の人々が都市に移り住むのに高いハードルがあったり,都市の大学への入学が難しかったりと生まれながらの差別とも言える制度です。その「農民戸籍」を持つ農民工の低賃金での働きにより,日本の重工業は大打撃を受けているというのは,一つ一つの単体の知識がつながったような思いがして大変興味深かったです。もちろん,この日本の重工業の没落につながり,かつての「学歴社会/就活の黄金パターン」が崩れていったという就活に関するためになるお話も面白く,つい笑って聞いてしまいました。
第2回以降の授業も楽しみです。

becky828    reply

川島先生、貴重なお話ありがとうございました。
中国には大豆のイメージがなかったので経済成長に伴う食糧需要を補う役割を大豆が担っていることに驚きました。中国が大豆、南アメリカは工業製品を互いに輸入しあうから世界的な貿易が活発になりお互い利益を得られていますが、もし中国の広大な領土で大豆の栽培が可能だったらどうなっていたのだろうか、と思います。特に南米は,,,?農民工をはじめて知りましたが、長時間低賃金労働で国際競争力が高く、日本の明治の殖産興業下の女工に似ていると思いました。

m0e0g    reply

ハンドルネームと別にどこに氏名を打てばいいのかわかりません。

戦後は大豆を飼料として使うことに気づいて中国の食を支えたという説明があったが、油に使えることには気づいて飼料に使えることには当分気づいてなかったのだとしたら不思議だと思った。また、農民工がもう足りなくなるので終わったモデルだという説明をしていただいたが、中国の人口13億人のうち9億人が農民戸籍でその中では収入が多い方の農民工が2.3億人なら残りの内陸でもっと安く働いている農民などが農民工になりたがるのではないかと思った。
中国の大豆の生産量を調べたところ、アメリカやブラジルの10分の1ではあるが世界4位らしいのでアメリカから独立しても大丈夫にしたいんだろうなと思ったが、中国での生産量の10倍も消費しているのでブラジルから全ての大豆を買い取らない限り流石に無理だろうと思った。

akanexwx    reply

一国の食料需給から経済を見たことがなかったので新鮮だった。西洋の人には主食がないというのも言われてみなければ気付かなかった事実であった。工業製品と違い、農業製品は変化に適応するのに時間がかかるという点で今回の貿易戦争はアメリカに軍配が上がったとみて良い、というのも非常に納得のいく解釈であった。しかし、中国が今回の貿易戦争から立ち直ることができたとすると二、三年後には中国の大豆の供給はブラジルに回っており、その時にアメリカが再び貿易戦争を始めるのであれば今使っている切り札が使えなくなる。その時には、双方何を切り札にするのかを考えてみようと思った。

taku98    reply

アジアの食文化や化学肥料の発達・大豆の普及など色々な物事と絡めて食料問題が論じられ、とても面白い授業でした。特に、食糧問題はすでに解決されていたことに驚きました。
授業の後半では食料だけでなく、それを生み出す農民と、そこから生まれた農民工について論じられ、現代中国の社会と世界経済の問題を知ることができました。私は第二外国語で中国語を選択しており、中国語の講師から都市戸籍と農民戸籍が分けられていることは聞いていたのですが、なぜそんな区別があるのかと疑問に思いつつも深く考えていませんでした。授業で農民戸籍という制度には現代の奴隷制度とも言える面があることを知って、もっと深く知らなければならないと思いました。

kensugawar@food2018    reply

前回の講義、興味深く拝聴させて頂きました。食物の栽培の歴史が現在の貿易戦争にまで影響を及ぼしているという話は非常に面白かったです。
1つ質問があります。中国の近年の経済成長は、農民戸籍の人々を農民工という安価な労働力としアメリカをはじめとする巨大資本のもとで働かせることで成り立ってきた成長モデルであり、現在アメリカの批判によって揺らいでいるという説明がありました。しかし、そういった外的要因がなくとも、ある程度の学歴はあるけれどもトップレベルではなくそして要求する賃金も農民戸籍の人々に比べれば高い都市戸籍の人々が、アメリカにおけるラストベルトの白人層のように、「本来我々がもらうべき仕事が農民工に奪われている」と主張して反発し、農民工による成長モデルが中国国内から崩壊することは十分ありえることだと考えます。こうした事象は実際には起きていないのでしょうか。もし起きていないとすれば、彼らの不満はどこへ向けられているのでしょうか。もしご説明いただければ幸いです。

hoku125    reply

感想・意見・疑問点
 川島先生は、世界の中で食料問題・飢餓問題はほとんどないとおっしゃっていたが、国連FAOなどの報告を読む限りでは、飢餓問題はまだまだ世界で取り組むべき課題だと思われる。しかしながら、先生がおっしゃったように50年前と比較して問題が改善されてきていることも確かであるから、どの地域に目を向けるべきなのか、優先すべきはどこなのかを考えなければならないと思う。
 講義の中で、中国や日本でこれ以上肉の消費が増えることはおそらくないとおっしゃっていたが、この先インドやブラジルなど発展途上国が経済成長を続ける中、世界的な肉の需要は高まるのではないだろうか。(食習慣は容易には変容しがたいので、急激な変化は見込みにくいと考えられる。しかし、魚食中心だった日本の食文化が、半世紀余りで肉も手軽に食べられるまでに変化したことを考慮すると、西洋化に伴って肉の消費量が増えることは必至であろう。)その際にさらなる穀物を飼料として生産できるかがカギとなる。ブラジルやアルゼンチンなどの南アメリカ諸国で生産を拡大するのは一手だが、しかしその結果アマゾンの熱帯雨林が開拓され、森林破壊が助長される可能性がある。豊かな生態系も脅かされる。このような問題を起こさないためには、現在植物が育たないとされている砂漠地域、あるいは気候変動などの影響で砂漠化してしまった地域で大豆などの飼料作物を育ててみてはどうだろうか。大豆は世界各地に野生種が存在するため、その地域に適した品種が見つかる可能性は高い。もちろん、飢餓にあえいでいる地域では飼料作物以前に日々の食事を確保する必要があるわけだが、その際にもたんぱく質を豊富に含んだ大豆は有効な食材となりうるだろう。
 先生は、「化学肥料と大豆が食糧生産の拡大を可能にし、その結果として人口増加が起こった」とおっしゃっていた。確かに化学肥料は非常に有効で、現在の日本では開発が進んでいるので環境への負荷が少ないものが使えるようになっているが、一方で発展途上国では肥料による環境汚染がいまだ深刻である。しかし、「100年後の地球環境のため」より「明日の食事のため」というのが人々の本音だろうから、安くて効果が高くてその反面環境への副作用が大きい肥料を使うしかない。この状況を打破するには、例えば国が質の高い肥料を安く配布するなどしなくてはならない。しかし、私が夏休みに訪れたスリランカなどの発展途上国では、なかなか外貨の入手が難しく、環境にやさしくかつ有効な肥料を輸入するにはまだまだ時間がかかるだろう。国連がある程度買い上げて支給するというのが実現できればよいが、国連の限られた予算の中でどこまでできるかは疑問である。肥料はそれほど環境への負荷が大きくないという議論もあり、様々な角度からの考察が必要だ。
 今回の講義で、中国の経済発展の陰の立役者として、農民工の存在があるということを知った。中国に存在する農民戸籍と都市戸籍間の格差の問題、これは非常に根深いものだと思うが、そこには都市戸籍の人々、更に言うならば中国政府が農民工に対して持つ、「都合のよい存在」のままでいてほしいという意識が透けて見える。この考え方は先進諸国に対してもあてはまりそうだ。我々は発展途上国の経済発展を支援しようとする、しかしその結果すべての国が等しく発展してお互いに貿易上対等の立場を築いたとしたらどうだろうか。資本主義の形は果たして保たれるのだろうか。アメリカをはじめ、農民戸籍を廃止せよと呼びかける先進諸国だが、農民工がいなくなることによって安い製品が手に入らなくなるかもしれないのである。もちろん、中国が大量安物生産市場でなくなったとして、第二、第三の中国となりうる地域は世界中に存在する。中国の南に位置するインド然り、東南アジアのバングラデシュやベトナム然り、アフリカの国々然り、である。リカードの比較生産費説は、それぞれの国が自分が最も得意なものを生産することで費用対効果が最大になるということをうたっているが、それでは一つの国は永遠に同じものを生産し続ければよいということになり、発展途上国はいつまでたっても先進国に追いつけない。それはそれで、資本主義の構造としては望ましいことなのかもしれないが、発展途上国としては面白くないだろう。今後の社会の経済的構造がどのようなものとなるのか、あるいはそれをどのようなものにしていけばよいのか、ということを考えることが重要である。
 世界通念として、「農業は儲からない」といわれる。実際その通りで、日本のGDPに占める農業の割合は約1%。就農したはいいものの、採算が合わずに結局農業をあきらめる人も多い。人口の約7割が農業関連の職業についているスリランカも同様で、若者の農業離れが問題となっている。「儲かる農業」となったならば当然より多くの人が参加しようと思うのだろうが、しかし人々の生活の中で欠かすことができない「食」にかかる費用をそこまで吊り上げるわけにもいくまい。そうなると、ブランド化や高品質・安全性を強調することで付加価値をつけるのが有効だが、発展途上国ではそうも言っていられまい。結局、換金作物(スリランカならば茶やパームオイル、ゴムなど)を育てることで外貨を稼ぐことになるのだが、それでは普通の野菜を育てている人々のもうけは増えない。野菜を作る人がいなくなってしまったら食べ物に困るが、しかし儲からないのでサービス業などに転職する人が増える。生産性をあげたらあげたで、より安く大量に作れるようになるので価格は下がる一方である。いっそのこと、企業化して植物工場で育ててしまえば合理的で利益が増えそうだが、それでは人間らしさが失われる感じがする。儲かる農業への模索は続けていかなくてはならない。
 最後に、自分の将来を考えるにあたって、今まで自分が将来性というものをあまり視野に入れていなかったことに気づいた。問題意識はあっても、それが果たして自分の将来を保証してくれるのか。そういうことを、様々な情報を収集して学びを深めていく中で考えていかなくてはならない。現在はemotionの時代だといわれる。先生もおっしゃっていたが、経済(=合理性)ではなく政治(=感情)で世の中が動いている。それは誰でも簡単に大量の情報に触れられるようになったが故なのかもしれない。どの情報を手にするか、そこから何を考えるか、というところが非常に大切になってくる。大学生の今できることは、多くの人に出逢って、自分の目でいろいろなことを見て経験することではないかと思う。ぜひ、これからも機会を逃さず人と積極的に交流し、その都度考察を深めていくことを心掛けたい。

川島先生に質問です。先生は農水省にいらっしゃったとお聞きしました。なぜ農水省を目指されたのですか?また、先生が農業経済学を志したきっかけは何でしょうか。(農水省で中国の肉消費が増えたら世界の穀物需給がどうなるか予測せよといわれたことがきっかけでしょうか?)今もなお研究を続けていらっしゃるのはなぜでしょうか。そして、今年退職なさるとのことですが、退職後はどのような道を歩まれるおつもりなのでしょうか。
 また、先生は食料問題は起こりえないとお考えでいらっしゃるようですが、先生のおっしゃっている食料問題の定義をお教えいただけましたら幸いです。また、なぜそのようなお考えに至ったのかも教えていただきたいです。
 上記の質問につきまして、私が先生の著書を読んで勉強すればよいものがありましたら、本の名前をお伝えいただければと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

kanemaru914    reply

 人類社会の根幹であった農業の効率化により生じた余力が、劇的な社会の変化に繋がっていることが分かりました。また、個人の自由を大幅に制限できる中国の強みである農民工の動向は世界に影響を与えると思うので今後は注視していきたいと思います。

Keisuke1014    reply

中国の大豆輸入の問題から貿易戦争の問題、さらに中国の不平等な戸籍制度へと話が展開していったのがとても興味深かった。中国が経済発展した現在でも「世界の工場」として機能していることにこれまで違和感を持っていたが、安価な労働力である農民工が2.3億人も存在することがその秘密であるということを知れて、納得がいった。しかし、農民工は中国が農民戸籍の人たちに自由を与えていないからこそ存在している。今や農民工は、先進国の製品生産の中心とも言えるので、先進国の利益のために彼らが犠牲になり続ける可能性は十分にあり、決して見過ごせない問題だと感じた。

s100horn    reply

もともと肉を食べることの多くなかったアジアで、食の西洋化に伴って肉食が増大した背景には、大豆栽培や化学肥料の開発による生産の拡大、米中の間の貿易戦争など、様々な事象が関連しあっていることが分かりました。
また、中国には現在でも都市戸籍、農民戸籍といった制度が残っているということは非常に衝撃的でした。この制度のせいで農民工の賃金は上がらず、農民戸籍の人々は次の世代でも農民戸籍でしかいられないという事態が生じており、これは大きな問題であり、早急に解決されるべきであると思います。
講義中には私たちの将来についての助言も下さり、有り難かったです。これからも中国をはじめとする世界の流れを注視していきたいと思います。

daiki7141    reply

今回の講義では「食」というテーマから私が想像していた内容をはるかに超えた国際問題の話などを聞くことができました。貿易における米中の対立が発生しており、この駆け引きにおいて中国にほとんど勝ち目がないという話が特に興味深かったです。食料の多くを輸入に依存している日本にとって中国が欠かすことのできない存在であることは言うまでもありません。米中の対立の影響は日本にも及ぶことが大いに考えられます。この対立がどのように展開していくか注視しなければならないと強く感じました。

toriimo0817    reply

中国の人口と食料について、高校の地理で学んだことにも関連する深い知識を得ることができました。農業と工業、そして経済はそれぞれ独立したものとして捉えがちですが、農業技術の向上が人口増加や人口移動に影響を与え、さらに自然な流れとして新たな工業労働力を生み、経済発展をもたらしたというシナリオは非常に興味深いものでした。
現在途上国と言われる国々も、中国が辿ってきたこのような道筋を同様に追うことで経済発展を達成できるかもしれませんが、農業技術が当時よりもはるかに向上していることや、環境問題への意識が高まっていることなどから、必ずしも同じようには為されないだろうと思います。

原ゆり子    reply

中国の農というテーマで、食料そのものと、その生産に関わる農民にまつわる興味深い話を聴くことができた。
また、その中で「主食+副菜」という組み合わせの考え方が東アジア特有のものであることや、大豆と化学肥料の普及が人類のあり方を変えたこと、現在世界に飢餓の人がほぼいないということなど、納得できる話や今までつながりを見出せていなかった話、間違った認識を正してくれる話も聴くことができとても面白かった。
農業と一口に言ってもいろんな分野と関わっていることが分かり、一国の農からこんなに話が広がるということは驚きであった。
(衣食住と日本語では言うものの)英語ではfood, clothing, and shelterとあるように、食事は人間が生きるのに最も根源的に必要なものであり、
その食を生み出す農業が、経済学・政治学・化学などありとあらゆる分野と密接に関わっていることを考えるのはとても興味深かった。
『日本の食料自給率は低い→輸入に頼っているから外国との関係が悪くなると私たちの食事に影響しうる』というような話はよく耳にするし、つい食事のことばかりに関心がいってしまうが、食だけでなく職にも関わる問題なのだと分かり、視野が広がった。
いつも身の回りに食料があって、それを支える農業がある、ということは私たちにとっては当たり前のことであり、いつも変わらないことのように思えてきてしまうときもあるが、それが世界情勢と密接に関わっていることを深く実感できたので、これからよりアンテナを張って時代の流れを感じ取り、色んな意味で「食っていける」ようにしたいと思った。

松本剛    reply

化学肥料や大豆の生産増が農業の飛躍の二大要素であり、しかしその生産増加が農民工による低価格での生産であったことを背景に、現在経済的、社会的な危機をもたらしていることが新鮮で興味深い内容でした。この状況を改善するために中国の硬直した組織が変わることが重要だと思いますが、中国に根付く伝統的思想やシステムを考えると難しいと思います。農民の子孫が大学に進出して社会階層的に向上することが、大きな革命につながるのかもしれず、その際に悲しい事件が起こる可能性が高いことが不安です。

glasnost    reply

習近平が豚肉を求める中国民衆に気を使っているという事実が、強権というイメージとは離れていて意外だった。アジアの農業を核としてシステム的に米中の貿易対立についての世界情勢を捉えるダイナミックな授業展開が非常に興味深かった。農民工という二億人を超える安価でパワフルな労働力こそが中国が世界の一大工業国家にのし上がったトリックであったこともまた初めて知ったことだった。
中国における都市戸籍と農民戸籍の制度による居住区域や職業の縛りの存在はショッキングであった。これは重大な人権侵害であると考える。国際社会においてこうした中国当局の措置が糾弾されないのか疑問に思った。

watson920    reply

まず「食」という観点について。かつての日本のトウモロコシ飼料の需要を鑑みて、中国が経済成長に伴い日本と同様に肉食化しさらに比べ物にならないほどの飼料需要を生み出しパニックになるとの予測が立てられた。しかしこの予想は、よりエネルギー効率が良い大豆を飼料として導入したことや、化学肥料を導入したことで生産性が爆発的に上昇したことなどに代表される”生産革命”によって打ち崩された。しかし、国内の肉食化(主に豚肉)により大量の大豆輸入資金を必要としたことが、現在の中国の貿易ゴールデンパターンの確立へとつながっていることを知り、驚きまた納得する気持ちとともに、「食」という背景が「農」そして「経済」へとつなげて考えられる現代の社会を興味深くも感じた。こういった事物の背後を他分野含めて広い視野で明らかにしようとする姿勢は極めて重要になるだろうと強く確信した。また、こうした経済体制の背景に中国特有の戸籍制度を基礎とする「農民工」の存在が強く影響を及ぼしており、そのことが世界の生産の常識や構造を大きく揺るがしてきた存在であることに衝撃を持った。「中国」という世界の工場というアバウトな抽象的視点でとらえていたものが、急に内実を伴った具体的事実として明らかになったように思う。あくまで、実際の事物や制度に具体的に即して考察する視点も重要だと感じた。また、現在アメリカと中国の貿易戦争が開始され、川島教授は中国が敗北すると断言していたが、こういったことを踏まえると中国は形は違えど過去に本が辿った流れをなぞってしまっているのだろうかとふと思っている。そして自由の国アメリカの最大の強みは、個人が自由にふるまいそして国全体としても変化できるという風土がある点だということを改めて強く感じた。これがある限り、アメリカの優位は何らかの技術革新によって覆されない限りなんだかんだ続くのではないだろうかと思う。敗北した中国が世界の工場たり得なくなった時、それは現行の世界的分業体制や自由貿易体制が崩れる時ではないだろうかと考える。その時世界がどのようになるか、その時代を生きていく我々は自らのためにも注視していくべきだろうと思っている。そのためのきっかけとなった授業だった。

monchy2018    reply

食料のパートに関しては、今まで受験勉強で散々詰め込んできた地理の知識がドミノ倒しのようにつながって爽快感すら感じた。中国の食文化の欧米化がアメリカとの貿易戦争をもたらしたと思うと、改めて社会の動きはおもしろくて、こういう流れを少しでも読める人が商売に成功するんだなと痛感した。農民のパートでは「現代の奴隷制」とまで仰っていた農民戸籍制度の闇を垣間見ることができた。自分に子供たちには幸せであってほしいと人間の単純な欲望が中国の成長に影を差しているのはなんとも皮肉だ。一日本人として、今後の中国の共産党一強体制に注目し続けたい。

rika0817    reply

農民工を低賃金労働者として保持するモデルのアポトーシスが進んでいるというが、モデル・システムという言葉で現状が語られる背景には、必然性が意識の中にありそうで恐ろしい。戸籍という言葉に現れる差別意識が無くなるのかという問題。給与が安くできたのは安くても働くという経済的要因だけではない。もし、それだけなら、そこに存在するのは経済力の差のみであり、少なくとも彼らの生活が存続する限りにおいて、問題意識は希薄になる。工場経営者からすればむしろ農村で働くよりも良い給与を出していることを、雇用の創出という価値として語るかもしれない。しかし、この農民戸籍制度が問題があるのは金銭の不均衡だけであるかといえば、答えは否だ。その根拠をあげてみよう。
1、戸籍という、個人の自由と選択の範疇ではないことで給与が決定されること。これはあくまでも、経済の中の倫理であるが、
2、金銭の配分と社会的な承認・名誉の配分が同一視されていること。即ち、本来金では買えないものを金で買っているという批判。これは一般な経済学的威力への反駁にすらなるかもしれない。
一方で我々は哲学的な生活者・消費者になれるのか。例えば、1000円の時計は安すぎるから買わないという選択をすることを私たちには求められるのか。求められるべきなのか。経済学的には否であろう。また実際的に少なくとも、チロルチョコをもらっても嬉しい大学生が、たとえ農民工よりも裕福に暮らしているとしても安すぎるものを買う事が現状で非難されることはないだろう。しかし、一方では農民戸籍制度に基づく農民工への固定的な低賃金を否定しつつ、一方では安すぎるものを消費する人間はどこか矛盾がないだろうか。現在、身体的に認知できる空間と、相互に関係しあっている空間が圧倒的に乖離している。数十年前ならそもそも中国の農民工と日本人とアメリカ人が同一の労働市場に存在することは無かった。その中でどう振る舞うのかを考えてしまう。ここで気をつけたいのは、過剰に自己防衛的になったり、むしろ自己否定的になることは望ましくないということである。一方で負荷ある自己の立場を離れることもできない。考えるばかりであまり答えは出ていない。


nas123    reply

今回の講義を通じて、中国の農民工について改めて考える機会を得た。農民戸籍という、差別的とも言える制度があるということによって農民工になりうる身分が固定化され、中国は人件費の安さを維持できているということを初めて知った。中国の目覚しい発展の裏には、公平とは言えないそうした制度があったのかと複雑な気持ちになった。農民戸籍の者たちが農民工になったりすることで稼ぎをえて、自分らの子供の学歴をあげようとしているという話があったが、農民工の稼ぎはどうしても都市戸籍の者の稼ぎよりは低くなると思われるので、学歴をあげようにも都市戸籍の人々と受験戦争で争うには金銭面で厳しいのではないかとも思った。そのため、戸籍制度によって貿易の国際的な競争力を維持するシステムが、農民工たちの子供達への上昇志向で崩壊するというのは、起こり得てもまだ先のことなのではないだろうかと思った。一方で、都市戸籍と農民戸籍で格差をつけているということは、農民戸籍の人々に不満があるだろうし、そうした不満が原因となり、上のような学歴上昇によるものかはわからないにしても、このシステムが崩壊して行くのは間違いないだろうと思う。

川上    reply

以下、講義内容の要約である。
① 中国の食料事情
中国では食生活の欧米化と食料供給の安定が、大豆の大量輸入と化学肥料の普及によってもたらされた。近年、自国からの輸出品に対して相互に高関税をかけるなど、米中間の貿易摩擦が深化する中で、同国は従来の大豆輸入相手国アメリカに代わって南米諸国に活路を見出している。

② 中国の農民問題
1980年代以降、経済発展が本格的に始まった中国では、都市化の進行や農業の機械化に伴い、沿岸都市への人口流出が進んだ。富と名声を求め離農した集団、所謂「農民工」は、推計2.3億人にも上る。同時期に、アメリカでは、新自由主義を背景に、資本の自由化が推進された結果、多くの国内企業が生産拠点を海外に移した。その際、生産コストを抑えるべく、質の高い低廉労働力たる「農民工」が大量動員され、中国の急速な工業化を支えた。「農民戸籍」なる差別的な社会制度の存在も、経済成長の段階を問わず安価な労働力を常時供給し、同国が「世界の工場」として名を馳せる主因となった。ところが、現在、こうした「農民工」は、劣悪な条件下での労働よりも学問を通した社会的地位の向上を希求している。さらに、大量な低賃金労働力の存在は、諸外国との貿易摩擦を引き起こす要因ともなっている。中国再興の基盤となった「システム」は、様々な内憂外患を抱え、静かに終焉の時を迎えつつある。

Gooner0919    reply

成長し続けて来た中国を中心に食料と農民という二つの観点からの話をしていただきましたが、特に今後の日本経済にも影響する農民工の話がとても興味深かったです。国際競争力の低くなった日本が今後どのような分野で戦っていけばいいのか、など農業や食にとらわれない幅広い視点から自分でも考え直すとても良い機会をいただけました。

okayu0523    reply

今回の講義では、中国の「食」というテーマから出発して中国の食糧事情や中国が「世界の工場」と呼ばれる所以となった「農民工」の社会的構造やその問題を分析し、最終的には中国を中心に世界でいかに多様な動きが生じているかという現代世界のダイナミックな流れの洞察まで内容を広げることができました。
まず、中国はその巨大な人口を養う肉類を生産するのに必要な飼料作物(大豆)を主に新大陸、とりわけ南米から輸入しております。かつてはスターブラウンによって、中国が経済成長を達成し、食の西洋化・肉食の普及が進んだ場合、その食料をいかに確保するのか、という危惧が表明されましたが、大豆と化学肥料の普及が食の革命を起こし、現代世界でも食料は比較的安定的に供給されています。しかしながら、昨今の米中貿易戦争の影響により、中国は南米での大豆栽培の拡大を模索し、それは講義では触れられませんでしたが、熱帯雨林の伐採=森林の減少や畑での過耕作、土地の摩耗を引き起こすでしょう。地球温暖化の抑制が主張される中、二酸化炭素を吸収する働きを持つ森林を減少させることは、国際的な問題となりえ、また過耕作により食糧生産が不安定になれば、南米の国々の農民の生活が不安定化するだけでなく、中国での食糧問題にもなりえます。
現代世界と密接に関連する中国の食糧事情、対外状況をしり、危機感を感じました。
次に、中国の工業生産の要ともいえる農民工はその社会階級の上昇を試み、農民工自身が農民工システムの崩壊を助長しようとしていることが講義では語られました。これに加えて、中国国内での賃金上昇や労働者の質を理由に他の南アジアの国々、インド・バングラデシュや東南アジアの国々、ベトナムへと中国国内の工場が移転しつつあります。このように、国際競争力を高めるためにより賃金の安い国々へと労働集約的な工業製品の生産拠点は移動していくわけであります。しかしながら、このようなことはないかもしれませんが、もし現在貧しいといわれている世界の国々が一様に豊かになってしまったら、この動きはどうなるのでしょうか。今の流れからすれば、日本、韓国・台湾、中国、ベトナム、ときてインドやバングラデシュに移行しつつあります。しかし、この次は?おそらく遅くても20年後このように考えるまでにはインドやバングラデシュでも現在の状況とは劇的に社会状況を変化させているはずです。そのとき、世界はどういう風に流れていくのか。これからの世界の不透明性が危惧されるようでした。

rika0817    reply

Food×ITという題から一体どんな話をするのか私は想像がついていなかった。食糧生産や食料流通におけるITの活用ぐらいを漠然と想像していたので、食事記録におけるITの活用という主題にまずは刮目した。以下感想を列挙する。
・食事を記録することと、記録を客観視することと、その記録をもとに健康行動を変えることという、それぞれの段階において人の行動を起こさせたり変えないといけないという点を鑑みたときに、より視覚的に訴えることやスマホを活用することは有効に思われた。
・食文化の記録として面白い。日本人が良く食べる特定の食事は何かということと、実は日本にはこんな食事があるということが連続的に記録されることには価値があるのでは無いか。個人間比較だけでなく地域間比較や世代間比較によって、文化の記録であるとか、健康政策実施の際のエビデンスとか、マーケティングの材料などにもなるのでは無いか。
また食に関わる言語使用の事例の蓄積として面白い。ヨーグルトという言葉一つにも、AさんBさんCさんそれぞれに指し示すものが違う。またチョコクッキーでも、ナッツがどうのとかブルボンがどうのとかで差異化されている事が分かる。人は何を基準に食事を同定もしくは区別しているのかということを思ったりもした。なんとなく、昆虫の隠蔽種の発見の話などを思い出した。
・一方で私は自炊をしているが、往往にしてなんの名前もない料理を作っているから、FoodLogは使いにくいかもしれないと思った。適当な野菜を切って炒めたり、煮たりしながら味付けを考えるとか、味見をしながら適当に味をつけるとか、極めて不確定性の高い料理をする。そのため、私が使うと毎回料理に名前をつけてその名前を使い捨てにすることになり、そのうち命名するのが面倒くさくなって記録をやめそうだと思う。

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