ディシプリン(学問領域)に
とらわれない思考を身につけたい

第11回 12月13日 上別府圭子

「家族」を見つめ直す―家族ライフサイクル上、 家族機能を支える資源―

ジェノグラムやエコマップ、 動物家族画などの家族のアセスメント法と家族ライフサイクル理論 やアタッチメントスタイルの世代間伝達について学び、 自分の家族イメージを振り返る。また将来 創りたい家族イメージを描き、 家族が機能するために必要な資源について考える。

講師紹介

上別府圭子
東京都出身。1978年東京大学医学部保健学科卒業。1983年同大学院医学系研究科保健学専門課程博士課程単位満了退学後、虎の門病院に勤務。こどもの城小児保健クリニック、兵庫県立女性センター、東京慈恵会医科大学附属病院を経て、2001年日本橋学館大学助教授。2002年東京大学大学院医学系研究科着任2012年12月1日より現職。保健学博士。
授業風景

家族看護学を専門とされる上別府先生は、私達が家を思うときに、実際の家/思い出の中の家/未来の家族を想定することが多いので、それをテーマにして話してくれます。

まず看護学の領域では在宅看護と訪問看護があり、前者は病院ではなく地域に暮らしている人のための看護学、後者は在宅の患者さんの家に訪問をして行う看護であると説明がありました。そのほかに家族看護学というものがあり、患者が家に居ようと病院に居ようと関係なく、看護の対象を患者含む家族に設定する看護学です。

話は変わり、近年日本では婚姻数が徐々に減り、平均初婚年齢が高くなってきています。出産を見ても、35歳以上の出産の割合が2000年で11%だったのが2011年では24.7%になり、40歳以上の出産率も1%から3%に上がっています。婚外子が日本では少なく、子供を有することと結婚が強く結びつかれていることがわかります。技術発展により人工授精のケースも増えています。出産や子育ての事情が随分変わっていることを指摘していました。

次に、世帯はどのように変わってきているのでしょうか。平均世帯人数(世帯内の人数)が減ってきて、単身や二人世帯が増えたので世帯数自体は増加しています。これに伴い、今まで家族内で行われていたことが外部化されていくことが起こっています。「家族機能の外部化」というのは、例えば曾祖父母の介護や子供の保育は、介護サービスや保育園を利用するようになっていることです。また、家庭内で行う場合、介護の人の負担が増える点では大きな問題となってきます。

学生たちにはジェノグラム(家族員の年齢や生死、関係を詳細に現した家系図)を描いてもらいました。描いたジェノグラムからは、自分の世代と親、祖父母の世代では兄弟姉妹の人数が違うことがわかり、そのうち父方より母方のほうが描ける人もいました。ジェノグラムは家族の歴史や、身体的心理的社会的特性が見出せて、臨床実践的には疾患の遺伝や体質を把握するのに役立ちます。

ジェノグラムのほか、エコーマップも描いて、グループに分かれて気づいたことを話してもらいました。家族員や同居している人を同じ円に描き、その人たちとつながりのある人を外部に描けば、外部システムがどのようになっているのか分かり、関係性に気付くことができ、それを簡単にまとめました:

  • 大学に入って独り暮らしや引っ越すことによりライフサイクルが変化して人間関係がガラッと変わり、大学の中で割く時間が多いコミュニティほど関係が強くなるのではないか。
  • 近所付き合いという意味での家族共通のコミュニティが都会と田舎とで違っていて、都会だと近所とはあまり親しくないことがあるのですが、共通のコミュニティは家族内で何かの危機があったときにこれを通して助け合えるメリットがある。
  • 自分にとって密接の関係が親にとってストレスになる関係になるのではないか。例えば、大学では自分にとって密接な関係を気づく場であるが親にとって金銭的なストレスになりえる。
  • 親の関係について知らないことがある。原因としては、単身赴任によって長期にわたって家を空けていて、一緒に居る時間が少ないから。父より母の実家の方と関連が強いのは、母方の家のほうが子育ての支援をしてくれている。認知症の祖母の介護を母がしているため親子関係がストレスになるので良くないのではないのか。

このエコーマップを臨床で見ると、家族員の関係性(家を支える主体など)が変わりうることを示しました。以上、今回は家族員の関係をアセスメントしようと思ったとき、ジェノグラムやエコーマップは構造から分析したいときに使えると締めくくりました。

コメント(最新2件 / 22)

gene32    reply

一人暮らしが増加している今、地理的に離れていても関係を薄れさせないために必要なことについて考えました。今年から地元を離れて上京した私にはLINEでやり取りをしている友達と毎月Skypeで連絡を取っている友達がいます。個人的にですが、私にとっては毎日LINEする友達より月一でも顔を見て声を聞いている友達の方が強い関係を維持出来ているように思います。なので、人間関係には顔を見たり声を聞いたりすることが大切なのだと思いました。

ram168    reply

家族看護学という学問が個人的に馴染みのないものであったので、新鮮な気持ちで聞いていました。看護というと義理の両親の介護であったり老々介護だったりが注目されがちであるけれども、看護が発生することで家族全体にどのような影響が発生するのかに注目することはこれからの時代に必須のことであり、家族看護学の意義を肌で感じることができました。家族の中と外にどのような関係性が存在するのか、どのような結びつきなのかがエコマップで理解することができた。今の世の中は電子通信が発達しているので、心の結びつきが強ければ遠くに住む人でも関係性を維持発展可能であると考えていたが、物理的距離の問題がどのグループからも出てきたのは意外であった

7vincent7    reply

今回の講義で特に印象に残ったのは、エコマップについてである。まず自分のエコマップを書いた際、父の人間関係と母の人間関係に関して認識している量に大きな差が出たことに驚いたが、そのことにより、外部との人間関係のみならず、それまでの家族内での関わり方、人間関係についても深く考察する機会を得た。
また、それまで意識もしなかったようなことが問題として浮かび上がるなど、エコマップの有用性が顕著に感じられた。

minorin7    reply

戸石先生の講義で家系について学びましたが、この講義で家族システムについて具体的に学びました。ジェノグラムを書いた際、兄弟の年齢さえわからなかったので、元々稀薄な関係だなとは思っていましたが少しショックでした。

AIL205    reply

今回の授業は講義よりもグループワークがメインでしたが、非常に興味深いものでした。
自分と家族や知人との関係をジェノグラムのような図で改めて書いてみると、身内でさえ年齢や交友関係が分からないことがあり、家族というまとまりの中でも各々のプライベートな領域があるのだということを実感しました。そのような領域を他の家族が知らないことは、個人の看護をする上で問題になりうるのかもしれないと考えました。
他にも、交友関係は流動的になりがちであるという指摘がありましたが、これは地理的な移動が以前の時代に比べて比較的自由になったためではないかと考えました。身近な物事でも、客観視してみると意外なことが浮かぶのかもしれません。

nagi5    reply

大変興味深い講義でした。
グループワークがあり、家族についての他の人の考え、感じていることを知ることができ、新鮮で良い機会になりました。
家族の交友関係について考えた時、私が一人暮らしをしているということもあると思いますが、思っていた以上にほとんど何も書くことができませんでした。

mthw509    reply

講義の中でジェノグラムを書いたのが印象に残りました。一般的に家系図ときいて思い浮かぶ家系図とは違って、別居していたり、流産したことがあるときなどの記入方法が細かく決まっていて、かなり詳しく書くんだなと感じました。また、エコーマップを通して、私たちは一世帯あたりの人数は減っているというのに、その減った中でもお互いの環境をよく知らないんだと思いました。

ma76    reply

エコマップを書いた。
家族間の関係を書くのは難しいと思った。
家系図を書くのは何回目かになるが、おばあちゃんやおばとかの年齢は分からないもんだなと、新しい発見があった。

mk0806    reply

医者(赤の他人)に自分の人間関係を伝える他の方法はないかを考えましたが、この授業で実際にジェノグラムやエコマップを書いて、やはりこれらが最適だと改めて感じました。一瞬で多くの情報が読み取れてすごく分かりやすいです。人間関係は目に見えないのでこれまでぼんやりとしか認識していませんでしたが、いざ書き起こすことで、希薄さの度合いなど新たな発見がありました。

oka430    reply

エコマップ、家系図を通して一番身近である家族という意味での家について学んだ。一番身近とはいえ、そこには経済的な事情なども絡んで複雑な形をとっていてそれを図から考えていくのは楽しかった。

mdk216    reply

ジェノグラムにはさまざまな定義、ルールがあり、こんな厳密に書かなくてはならないのかと最初は戸惑ってしまった。実際に書いてみてもやはり十分には書けず、自分が家族、親戚というものに対して少し疎遠になっていると感じた。人間関係を再確認するという点で意義があったのではと思う。

HSn1230    reply

エコーマップを書きながら、自分の親の人間関係が意外と分からないなと思った。家系図についても同居している(していた)人じゃないと分かりづらいと感じました。

fs0312    reply

エコマップやジェノグラムを描いたが、これが実際どのように治療に活かせるのか疑問が残った。どちらかというと軽度の精神的問題を抱えた患者に適用するものなのだろうか。重度の疾患を持つ患者にはあまり意味のないものなのかなと思ってしまった。

panda123    reply

ジェノグラムを実際に書いてみると、私は両親や姉の年齢はわかるけれど、関わることは多いのに祖父母の年齢は知らないということに気付いた。私は一人暮らしなので自分一人のエコーマップを書いたけれど、もし両親や姉も含めて書くとすると、私は家族とつながりのある外部システムをしっかり把握できているかわからないなと思った。日本では結婚と子供がセットで考えられているというのは私も当たり前に思ってしまっていて、意識したことがあまりなかったけれど、だからこそこのような考えを覆して、結婚していなくても積極的に子供を持ったりするのは、なかなか難しいのではないかと思った。

Laco1925    reply

家族看護学という分野を始めて知ることができた。人口ピラミッドを考えると、この先介護問題は確実に現れてくるだろうことは容易に想像できる。この時、家族看護学はこれらの問題を解決することができるのだろうか。つまり、個々の家族の負担を増加させるというやり方は、人口比という圧倒的な差を解決することができるのだろうか。それとも、家族看護学はそれを目指していないのだろうか。ジェノグラムというやり方は非常に面白く感じた。「家族」というものを力学的に解析できるものの基礎となりうるように見えるからだ。このような家族ネットワークの記述を通して、近年急速に拡大しつつあるネットワークの数学的分析の成果を活かすことができるかもしれないと感じた。

tsu2954    reply

家族一人の病気が家族全員に何かしら影響を与えるというのは、言われてみれば当たり前だが、意識していなかったことなので、はっとした。自分やグループの人のジェのグラムを見ると、家族の各員から放射状に線が伸びるだけでなく、様々に線が結ばれているのが分かり、そうした面でも上のことが実感できた。

grape22    reply

授業の中でジェノグラムやエコマップをかき、それについてグループで話し合ったのが新鮮でした。特にエコマップは、同居している家族を中心にそれぞれの外部システムとの関係を描き入れていくことを通して普段はあまり意識されない部分も振り返ることができたように思います。これらが、実際に病気の患者さんだけでなくその家族もケアするために用いられているという点が非常に興味深かったです。

morizo15565    reply

ジェノグラムを書いてみて、私がほとんどのいとこよりも年少だということもあり、ほとんどのいとこが実家を離れていることを再認識しました。また、結婚して家庭を築いているいとこも多いけれども、きちんと把握していないことに気づかされました。
親戚等との関係を見つめ直す良い機会になりました。

ngnl0715    reply

家族や親戚との関係について改めて考えさせられる回だった。自分の祖父母はおろか、両親の年齢を思い出すのさえ一苦労し、自分の「家」との関係の薄さを実感した。しかしながら程度の差はあれども他の人もそのようだったので、そういう時代なのだろうかと思った。

aub0625    reply

今回の授業の中ではエコーマップを書く作業において、自分の家族について意外と知らないことが多く、いざという時に知らない人に伝えることは中々難しかったということを実感しました。

ma7    reply

自分の周りの環境を書いてみることで、今まで見えなかったことが見えてくることがわかりました。他人と比べることで、自分の性格なども見えてきて、面白いなぁと思いました。

haru3131    reply

遅くなってすみません。
ジェノグラムやエコマップを描くことで、自分の回りの関係性というものを可視化でき、色々な発見ができました。関係性や心のなかといった、目に見えないものを、目に見える形や言葉で整理することで問題を認識できるようにするところが心理学と同じ側面を共有しているように思いました。

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