ディシプリン(学問領域)に
とらわれない思考を身につけたい

第1回 10月09日 刈間 文俊

中国映画で描かれた「水」――陳凱歌の『黄色い大地』と張芸謀の『紅いコーリャン』から

中国が改革と開放の時代に入りはじめた1980年代、それまでの社会主義体制からの変化を最初に世界に教えたのは、「新潮流」と呼ばれた新人監督たちの映画だった。陳凱歌監督の『黄色い大地』(1984)がロカルノ映画祭で、張芸謀監督の『紅いコーリャン』(1987)がベルリン映画祭で、それぞれ受賞したのが、その象徴となった。この二人の監督は、それ以降、現在にいたるまで中国映画界をリードする代表的な監督となるのだが、その二人の第一作が、いずれも「水」にある種の特権を与えるものであったことは、注目されてよい。『黄色い大地』では、毎日5キロの道を歩き、黄河の水を汲み続ける貧しい村の少女が描かれ、一見すると愚鈍に見える少年は、高らかに「寝小便」の歌を歌いあげる。そして、造り酒屋を舞台にした『紅いコーリャン』では、酒を仕込んだ甕に小便をするという狼藉が行われるが、なんとそのおかげで美酒ができあがってしまうのだ。鮮烈な映像のメッセージ性で評価された彼らの作品にあって、なぜこのような描写が登場したのだろうか。水―寝小便―小便と続く「水」の連鎖の意味を、映像を分析することから考えてみたい。

講師紹介

刈間 文俊
東京大学大学院総合文化研究科教授(表象文化論)。専門は、中国映画史、中国現代文芸。 1983年東京大学文学部中国語中国文学科博士課程修了。1980年代以降の中国文芸に関心があり、新しい文化状況を追いかけるとともに、サイレント時代の中国映画にも魅力を感じている。これまでに中国映画の字幕を100本近く手がけてきた。
授業風景

DSC04399_2.jpgDSC04396_2.jpg

コメントする

 
他の授業をみる

Loading...