ディシプリン(学問領域)に
とらわれない思考を身につけたい

第3回 10月23日 芳村 圭

気候と水循環 ~雨はどこからきたのか~

地球は、「水の惑星」と言われるほど、豊かな水に恵まれています。この水は、気体、液体、固体と姿を変えながら、地球上を循環しています。この水の循環は 非常に複雑で、わかっていないことがたくさんあります。こうした複雑な地球上の水循環の様子を教えてくれるものの一つに、「水の同位体」があります。水は 通常「H2O」で表されます。ところが水の中には「H218O」や「HDO」などで 表される「安定同位体」と呼ばれるものが含まれているのです。この「水の同位体」に注目することで、地球上の水循環の様相を探ること、たとえばある地点で 降った雨がどこからきたのか、いつ水蒸気になったのか、などを解明することが可能になります。さらに、数十万年も前に凍結した南極の氷や、数百年間生きて いる樹木の水由来の成分の同位体を調べることによって、その時点の地球上の様子を探ることもできます。人類が観測を始める遥か以前の地球の情報が得られる 点で、水の同位体はまさに「情報のタイムカプセル」なのです。

講師紹介

芳村 圭
東京大学大気海洋研究所准教授。 専門は気象学・水文学・同位体地球化学。主として水の同位体比情報を利用して、シミュレーションモデルや現地観測を駆使して地球水循環過程を解明する研究 を行っている。2006年に東京大学より博士(工学)を取得、2006年から米国スクリプス海洋学研究所勤務ののち、2010年から現職。著書に「気象学 における水安定同位体比の利用」「天気と気象についてわかっていることいないこと」(いずれも共著)など。
参考文献
  • 筆保弘徳・芳村圭(編),天気と気象についてわかっていることいないこと,ベレ出版,ISBN 978-4-86064-351-5,280p, 2013.
授業風景

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コメント(最新2件 / 24)

戸嶋 一博    reply

雨に含まれる水の同位体比をはかることによって、その雨の起源となる場所を特定し、それをタイの降水量減少の原因を探ることに利用する、という話を聞き、科学技術のすごさを思い知った。最先端の技術の紹介もあり、それらを用いて観測史以前の気温や地球の環境を調べることができることを知り、大変興味を持った。

miyakawa    reply

水の同位体比により昨日の雨水と今日の雨水も異なるものなのだ、というお話を聞いて「水=H2O」という自分の単純な"水"観が変わった。人工衛星を用いた水蒸気同位体の分析などハイテクな研究についてのお話も非常に興味深かった。

goya    reply

一見、一様で地球上にありふれた物質である水の起源がわかるというのはとても面白かった。普段、地球水循環を感じることは無いので、そういうことが意識できて良かった。

S.M.    reply

高1まで地物、高2まで生物、センターで化学を勉強したが、そこまでの知識でもついて行くのにさほど支障はなかった。地理の知識も流用できるところがあり、もとから少し興味のある分野だったのもあって、興味深い講義だった。
個人的には先生の人柄が面白くて好きです。

YAMATO    reply

安定同位体比が緯度や高度によって変化する点や、雨の起源の分析のメカニズムが興味深かった。また、その分析が中国や福島からの汚染物質の分析にも繋がると知り、驚いた。

山田 晃平    reply

環境問題など全地球的な課題が叫ばれて久しい中、こうした「雨」や「水」といった視点は新鮮でした。
国際協力が必要な分野では、説得力が必要になりますが、多角的な分析は、この点で非常に有効だと思いました。

横山 怜太郎    reply

同位体の含有率を調べれば緯度・高度の違いが明瞭に現れるという発想は、言われてみればわかりやすいアイデアだが、その発想を最初に応用した人はここまで発展性があるとは思わなかっただろうと思った。今回は水から出発しつつ気象の様々な現象を垣間見ることができ、好奇心を刺激された。

しゅうへい    reply

積もった層の中の成分を調べるという点では歴史学・考古学に似通ったところがあるのかと感じた。
過去の気候を調査していくことはその当時の生態系を考える上でも重要なことであると思うし、幅広い分野に関連・影響がある研究ではないかと感じた。

W.S.    reply

水に同位体があることは知っていたが、それを使うことで水循環や、降水の由来などまで分かってしまうことはすごいと思った。また、モデルの利用などにより降水量の変化の原因や、物質の移動までシミュレーションを行っていることがよく分かり、自分の知らない所ですごいことが行われていることも分かった。また、地下水の枯渇というテーマについて前から興味があったので少し調べてみたいと思った。

tagaga    reply

水の世界規模での循環について学ぶことができた。水の安定同位体比など興味深い話が聞けて非常に面白い講義だった。普段気にしないで使っている水がどこから来た水なのかを考えるということもできて有意義だった。

平井 悠登    reply

雨水中の同位体の比率など、今まで考えた事のない話が聞けて面白かったです。人類の水の循環に及ぼす影響は人類が生きるために必要な議論だと思う。

かしわ    reply

より地球規模な話で興味が湧いた。理系として同位体などの話はかなり分かり易く頭に残る話だったのでまた講義を聞く機会があればこの様な話であってほしい。

福井    reply

地球内で水が循環しているのは知っていたが、水の同位体を考えることで、重い水、軽い水を分別し、雨の起源を追うことができるのは初めて知った。この方法は近年の異常気象の理由を探る手段にもなりうるし、過去の地球の水回りを調査する手段ともなり、有用であると思う。今回の講義とは関係ないが、水の同位体を多く含んでいると、人体に影響する、健康になる又は植物が育ちやすいなどの違いがあるのか疑問に思った。

森山 健太郎    reply

中性子の数が違うという、文系からしてみればあまり大きな差異があるとは思えない同位体を観測することができ、さらにその同位体の分布によって水がどこから来たものなのかを含めさまざまな情報を得ることができるということは驚異的なことであり、現代科学の発展の凄さを感じました。
水蒸気の流れを観測することができるのであれば、天気の予測を立てることも容易に、または正確に行えるようになるのでしょうか? この点が気になりました。

塚崎 隆志    reply

地球の水循環が水の同位体の比から推測できるということを知ることが出来た。雨の同位体比を調べることで雨がどこから来ているのかを知ることが出来、意外と雨に含まれる水が陸地由来のものが多かったり、時期によって雨水の由来する場所が大きく変動していたりと、知らないことも多かった。

M.A.    reply

人間の活動が水循環に影響を与える原因は農業というのは想像がついたが、地下水をくみ上げることによって、循環がかわってくると知って、おどろいた。いつ、どこの雨かは、水同位体比によって、比べられることをはじめて知った。同位体比は、温度や緯度によってかわってきて、氷を調べると、その当時の気温の情報を教えてくれるということがわかった。日本の水は、様々なところから来ていて、その割合を計算できるというのは、すごいと思った。また、大陸からの蒸発というのも大きくておどろいた。森林伐採の影響が9月に出るのは、タイでは陸からの水による雨は、9月の方が多いから、というのが理論的にわかってしまうのはすごいと思った。

T.H.    reply

人間の活動で、水循環に影響を与えているのは、大部分が農業で、かんがいで一番使っているというのは、工業と比較するとずっと多く、興味深かった。
地下水は化石水と呼ばれているのは初めて知った。
図として見ると、相変化をする場面が多いと思った。濃度の識別で色が付くというのは面白かった。早く凝結するという性質により、緯度・高度で重さの異なる水が生成されるのは興味深かった。
台風、海上でも質量は異なる。台風が太平洋にもの凄く降っているのは面白かった。中国の稲作が日本の降水になるのは面白い。雨は海から来るものとばかり思っていたが、陸水の影響が大きいところもあると知り、興味深かった。

ikeda    reply

同位体の量を調べることによって、水のルーツをはじめとして様々なことがわかるということを、この講義を聞くまではまったく知らず、非常に驚いた。この調査法は色々な方面に応用できるそうなので、これからも注目していきたい。

黒澤 貴    reply

水循環というテーマについて、普段の生活では絶えず関わっているがあまり関心を抱いていなかったので、今回の講義で興味が湧いた。水を、一つにまとめて考えるのではなく、同位体比という考え方で捉えるのは、非常に驚いた。水循環という地球規模の現象に関して、ここまで理論的な分析やシミュレーションが進んでいるとは思わなかったし、水を、インド洋、太平洋、中国からの水に分類して機嫌を分析していたのが非常に面白かった。また、同位体によって太古の空気の組成や気温が分かるということで、同位体の可能性を知ることができた。

芳村圭    reply

みなさん、熱心に聞いてくださってありがとうございました。今回の講義で一番知っていただきたいことは、水の循環は、人間にとってとても身近で「わかっていて当たり前」と思われがちのようなのですが、まだまだ分かっていないことが多いということです。実はこの世の中はそういう「身近だけどわかっていないこと」がたくさんあります。みなさんも日常の素朴な疑問をどんどん突き詰めていってください。もしかすると大きな研究につながるかもしれませんよ。

戸塚啓介    reply

水の同位体比によって水の循環を研究するという内容ですべての水は識別できるというのが新鮮であった。さらにこの研究の応用として、中国をはじめとする大陸からの汚染物質の飛来や、福島の原発事故による放射性物質の飛散をシミュレーションできるということが挙げられておりとても興味深かっ た。

石川 大希    reply

同位体の分布でその水がどこから来たのかが判別できるということに驚いた。案の定、日本には様々なところから来ていて、中国の方から来ている水も意外と多く、汚染についても気になった。近年多くの事例があがっている異常気象についても様々に解析できそうで、これらの技術は今後も発展させていってもらいたい。

KY    reply

自分は文系の人間なので、同じ水でも同位体という面からわけて考えるということにはなるほどと思わさせられると同時に、凄いと感心した。水の循環といっても、普段は漠然と蒸発したのが雨として降るくらいにしか考えたことはなかったが、そこを、どこから来た水の雨なのかと考えるだけで深い研究になるのだと、他の事にも応用できる考え方だと感じた。

KEN    reply

水の同位体比率(重い水・軽い水)を調べることによって、雨の由来となる水源の推定や水の流れが分かるのはとても興味深かった。質問の際に先生がおっしゃっていた、水の流れから汚染物質の流れをつきとめる事ができるというのは、環境問題解決への大きな助けになると思った。
国境を超える汚染物質の流れが分かる事で、目には見えづらい各国の責任を明確・客観的に数値化でき、各国の個々の取り込みからグローバルな環境問題の解決に繋がると思った。

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