ディシプリン(学問領域)に
とらわれない思考を身につけたい

第10回 12月11日 渡邉 正男

日本中世における水をめぐる争いとその解決

水をめぐる争いは、時代や地域を問わず数多の事例を挙げることができますが、当然ながら、そのあり方は一様ではありません。講義では、鎌倉時代に起こった 用水に関わる争いの事例をいくつか採り上げ、それらがなぜ起こったのか、どのように解決されたのか、残された史料を読み解くことによって、具体的に明らか にします。さらに、それを踏まえて、水をめぐる争いのあり方、争いの中から人々が取り結ぶ関係のあり方の日本中世的な特質について考えてみたいと思いま す。

講師紹介

渡邉 正男
東京大学史料編纂所准教授。 専門は日本法制史。法・制度および権利の関係のあり方が歴史的にどのように変化していったかを、史料に基づいて、具体的に明らかにしたいと考えています。現在は、14世紀の社会秩序の構造変化において、在野の法知識・法技能を有する者達が果たした役割に関心があります。
授業風景

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コメント(最新2件 / 24)

W.S.    reply

前回の解決に至らなかった事例と今回の事例の比較は面白かった。細かい部分の違いはあったが、現地からの声を考慮し、道理的で抽象的な方法でなく、具体的な検討を行ったことが大事な要因だったように感じた。このようなことは現代にも通じる教訓であったと思う。

Yamato    reply

当事者間の話し合いで争いがきちんと解決しているところに驚いた。僧侶のグループや様々な役職の存在など普段知りえないことを知ることができてよかった。

横山 怜太郎    reply

講義の中でも指摘されたが、今回は前回の事例と異なり、所有という根本的な利益を全面的に争うのではなく、用水の分配やその代償という比較的論点の限定されたものだった。そのような紛争に対して朝廷がどのような判決を出すのかも興味深いが、結局は荘園領主を仲介とする和解が成立してしまったので、その点は疑問のまま残った。イングランドのように日本にも近代のみならず裁判機構の発生以来の判決を集成したものがあれば面白いだろう。

S.M.    reply

個々の事象が争いが解決しやすいように転んだ幸運な事例であるとは言え、前回のように権力の介入があっても解決しないまま続いた血腥い争いと違い平和的に解決に向かっていく様を見ているのには一種の面白さがあった。

M.A.    reply

水を争うときに、水不足だけではなく、支配体制の変化によっても起こりうることなのだということがわかった。解決法は、裁判ではなくて、当人の話し合いが行われたことによる。また、裁判所が役に立たない事例で、何のために裁判所があるのかなと思った。
今回の事例では、荘園の交渉した人たちが、昔からの知り合いだったから、話しあうことができたけれど、そうでなかったら、今回も解決しなかったのではないかと思った。

T.H.    reply

裁判の結果が当時の世相、勢力図を示しているのは面白いと思った。当然だが、測量や計測がはっきりできないからこそもあるので、最近の技術進歩のおかげで、このようなことが減り、良かったと思う。ダムのような貯水施設が無かった時代、かんばつは命にかかわる重大な問題でもあるのも納得である。前回とはうって変わって、水についての問題ではなく、支配体制の、また、比較的短い期間で解決を見ていて、様々な解決があることを知った。

塚崎 隆志    reply

水をめぐっての争いが数多くあり、先週触れたように朝廷、幕府の関与があっても解決したものもあれば、今週触れたように朝廷、幕府の関与なくして解決してしまうようなものもあったという話でとても興味深く聞かせていただきました。先週おっしゃっていた通りまだ争いの禍根が残っているケースもあるということなので他人事とも言っていられないと感じました。

しゅうへい    reply

今日の講義で扱った争いは、水不足問題に見えた支配体制の混乱であった。というよりむしろ潜在化していた支配体制の複雑化により生じていた絡みあった問題点が水不足問題の争いとして顕在化した事例のように感じた。水不足問題について両者がよくよく話していくうちに、支配体制の問題が徐々に実体を持ち始め、それが話し合いが進むにつれ、複雑化していたものが整理されていき両者ともに解決に導かれていったのだろうか。歴史から学ぶということは多々ある話だが、何かをめぐる争いというものはいつでも起こりうるもので、活かせるもの活かせないもの、様々例があるだろう。

higauri    reply

前回とはうって変わってきれいな解決だった。しかし、下地中分が起こらなかったら解決は遠かったのかな、とも思う。そういう事も考慮すると、特殊な事例であったように思う。前回に引き続き、受験ではあまり学ぶことのできない、地方の農村レベルでの出来事について学べて良かった。幕府もしくは大名にとって土地争いの解決がとても重要だったということが実感できた。
公文所は大変だったんだな…とも思いました。

Koya    reply

今回の講義は、前回の講義の幕府・朝廷が介入しながら解決しなかった水争いとある種対照的な、幕府・朝廷は介入しなかったが解決に至った水争いがテーマだった。大山荘と宮田荘の交渉は複雑で長いものであり、お互い譲れない点が多く困難なものであったことを知った。和解が稲作の時期に合わせて早まったりしたことも水不足の根幹が食問題とつながっているのを強く自分に印象づけた。前回の例と違い解決に至ったのは現地で詳細な取引が行われ直接言い分を述べ合うことで和解の余地が生まれたのだと思う。

山田 晃平    reply

今回の講義で扱った事例では、争いの原因が(人にはどうにもならない)自然災害にはなく、地頭の設置という極めて人為的なものでもあり、それ以前には安定した状況があったために、交渉という手段で解決に至ろうと動機づけされたのではないでしょうか。

tagaga    reply

今回の水をめぐる中世の村々の争いでは、前回とは異なり朝廷・幕府が関与せずに解決に至った事例だった。当時の史料から荘園領主間の交渉が行われたことが読みとれ、双方の村が納得する結果で争いが終息したことが分かった。当時の交渉の様子が非常によく分かる講義だった。

福井    reply

今回は水をめぐる争いが朝廷や幕府が関わることなく解決された事例を見た。現地の水不足ではなく、支配体制の変化が原因で争いが起こったが、領主間の交渉で、現地の意見をくみ取って具体的に解決策を探すことで、双方が納得することができた。前回の事例と比較すると、現地の当事者の意見を加味することが大切だとわかった。

黒澤 貴    reply

今回は、中世の水を巡る争いで、当事者同士で解決に至った事例を扱った。前回の事例と違い、幕府や朝廷などが介入せずに、比較的迅速に和解できたというのは非常に驚いた。時代は中世の鎌倉時代におけるものであったが、現代にも反映していくことができそうな、示唆に富む内容で、非常に面白かった。

miyakawa    reply

1つの争いの実状を知るためにたくさんの資料を参照する必要があるということが、用水をめぐる争いの中世的な複雑さを表していると思った。水不足ではなく、地頭の設置という支配体制の変化によりもたらされた事件の帰結と、解決に至るプロセスを詳しく知ることができたように思う。

かしわもち    reply

今回は上流・下流間の水の争いが解決にいたった例だった。上流・下流間の争いといえば、近年中国とベトナムなどの東南アジア諸国とのダム建設をめぐる争いが話題になっている。村と荘園の争いには上に権力があり、その力を借りることで解決ができたが、国家間の争いに上は存在しない。国連も協議制である以上一元的な権威には成り得ない。今回の解決方法を現代の水問題に当てはめるにはいくらか形を変える必要があるだろう。

ikeda    reply

中世にも、統治や訴訟を専門に扱う職業があったということは知らなかった。今回も、前回のように、問題解決のための話し合いは京都で行われたということが印象に残った。

sawa    reply

今回は前回の講義とは対照的に当事者同士での和解に至った例を取り扱ったが、用水の分配など比較的細かい論点が争われていたことが印象的であった。こういった細かい事柄はこのような機会でなければ聞けないので興味深かった。

tarou    reply

前回と今回とに分けて用水争論に関する二つの対照的な事例をじっくりと学ぶことができ、面白かった。
歴史を学んでいく中で、農民から搾取する存在という悪印象しか抱いていなかった荘園領主が、農民たちの生活のために一役買っていたということを知り、少し見直した。

戸塚啓介    reply

受験ではなかなか勉強のできない、戦とは異なる生々しい争いについて詳しく知れてよかった。中世における水をめぐる争いには人々の生存がかかっていたことを思うと同時に、現代においても水資源をめぐる争いが表面化しつつあることを思い出し他人事ではないような気持ちになった。

大野    reply

今回は前回とは打って変わって解決に至った争いの話であったが、支配体制の変化という人為的なものが発端だったということと、領主個人に解決に導くだけの力量があったと言うところが要因としては大きかったというように思う。また前回と今回二回を通じて、歴史研究というものについて考えさせられる所が多かった。中世と二次大戦直後では、どちらも僕にとっては歴史に過ぎないが、その学問的検証の濃度は全く異なるのだと感じた。

KEN    reply

前回の講義で、実効支配を目標として子供の喧嘩のように領地の所有を主張しあう事例を見てきただけあって、今回のように裁判所を通さずに双方の話し合いによる和解の事例は面白かった。
最近の中国の防空識別圏設定の問題も、前回講義の子供の喧嘩に似たようなものを感じるので、年を経た現在でも同じような事は繰り返し起こっているのだなぁと感じた。

石川 大希    reply

今回は前回の解決しなかった事例とはうって変わって、幕府等の介入なしに解決した事例であり、前回よりも聞いていてすっきりした。水不足に端を発した争いだったのかもしれないが、争いがどんどん自ら離れていき、支配体制の問題にもつながっていっている点が非常に興味深かった。ダム建設問題など、現代でも起こっている争いの解決のための方策が含まれているような気がして、このような事例から学べることも多いのではないかと思った。

KY    reply

前回、解決に至らなかった事例を見ていただけに、今回の事例は聞いてておもしろかった。考えてみると、前回・今回の講義のように、昔の一般の人々の暮らしについて具体的に考えたことはこれまでなかったので、それができたのは良かった。今回の事例は幸運な部分もあったように思われた。個々の事例によってそれぞれ違うように解決されてきた問題なのではと思った。

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