ディシプリン(学問領域)に
とらわれない思考を身につけたい

第12回 01月08日 沖 大幹

水危機ほんとうの話

安全な飲み水へのアクセス、改善された衛生施設の使用、健康で文化的な生活に必要な水の安定した利用、工業生産や農業生産に必要な水、さらにはエネルギー 生産や生態系保全に不可欠な水を確保できるかどうか等、水は持続可能な発展の鍵を握り、社会の繁栄と世界の安定に直結しています。今後、途上国を中心とした人口増や経済発展に伴ってさらに増大する需要を満たすことができるかどうか、そして、気候変動に伴い変わっていく水循環に適応していけるかどうか、予断 は許しません。しかし過去を振り返ると、世界の総人口は増えたのに、かつて11億人いると言われていた安全な飲み水にアクセスできない人々の数は約8億人 にまで減ったと推計されています。これは、ますます人口が増え、増えた人口が都市に集中してさらに深刻化する世界の水問題解決へ向けて、世界中が努力して きた結果です。日本で節水したからといって、水で困っている地域で水をもっと使えるようになるわけではありませんが、長年に渡って安全な飲み水を手軽に、 安定して利用可能にするための社会基盤施設を整備してきた日本の知恵や経験、技術や人財が役立つはずです。人類の持続性構築のために何ができるかを、みずから考えてみましょう。

講師紹介

沖 大幹
東京大学生産技術研究所 教授 東京大学生産技術研究所助手、講師、助教授を経て1997年より現職。その間、日本学術振興会海外特別研究員として、NASA (アメリカ航空宇宙局)ゴッダード宇宙飛行センターの客員科学者を2年間勤める。専門は地球水循環システム。特に広域の陸面水文量のリモートセンシング、 グローバルな水循環と水収支のモニタリングとモデリング、現状から将来へ向けた世界規模の水資源アセスメント、ヴァーチャルウォーターの交易、水を軸とし た千年持続学の研究など。国土審議会、社会資本整備審議会専門委員。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次報告書統括執筆責任者。2008年には日本学士院学術奨励賞等を受賞。
参考文献
  • 沖大幹(監修)・村上道夫(著)、田中幸夫(著)、中村晋一郎(著)、前川美湖(著)、東京大学総括プロジェクト機構「水の知」(サントリー)総括寄付講座(編)『水の日本地図 水が映す人と自然』、朝日新聞出版、2012年。ISBN 978-4023311367
  • 沖大幹『水危機 ほんとうの話』、新潮社(新潮選書)。ISBN 978-4106037115
  • 江守正多(編著)・気候シナリオ「実感」プロジェクト影響未来像班(著)『地球温暖化はどれくらい「怖い」か? 温暖化リスクの全体像を探る』、技術評論社、2012年。ISBN 978-4774150352
  • Maggie Black, Jannet King (著)、 沖大幹(監訳)、沖明(訳)『水の世界地図第2版――刻々と変化する水と世界の問題』、丸善、2010年第2版。ISBN 978-4621082478
  • 池上彰(編著)『世界を救う7人の日本人――国際貢献の教科書』、日経BP、 2010年。ISBN 978-4822201838
  • 沖大幹(監修)・東京大学「水の知」(サントリー)(編)『水の知――自然と人と社会をめぐる14の視点』、化学同人、 2010年。ISBN 978-4759814293
授業風景

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コメント(最新2件 / 21)

W.S    reply

水危機の本当の原因というものが水道インフラの有無や人口の分布など人為的なものであるということが新しい発見であった。また、水の七不思議の中にも私がそう思っているものがかなりあり、本当のことと私の認識がずれていたことが意外であった。

tagaya    reply

水の惑星である地球でなぜ水不足が生じるのか?世界の水分布や、水の使用量や価格などを見ることにより、その理由や問題点を考えることができた。水の偏在が水不足の原因であり、局所的な節水をしても、他地域の水不足は解決しないなど、新たな気づくことができた。

ikeda    reply

自分は、「水文学」という言葉を知らなかったが、先生の話を聞いて、興味がわいた。最初のところで出てきた、どの災害による被害が多いのかを示す円グラフが特に興味を引いた。

平井 悠登    reply

水問題に対してはほぼイメージする事しかなかったので、今回の講義で世界で起こっている事の概観が解かった気がします。また、水問題に対する我々の認識は少し間違っているのだと思いました。

R.G    reply

普段当たり前すぎて考えたこともなかったが、水道から水が大量に安く得られる日本はとてもめぐまれていると感じた。旱魃とかでなくとも、安全な生活水・飲み水に簡単にアクセスできることが世界的に難しい。このような状況下で、講義でもあったように水くみを行うことが貧困につながるということが衝撃だった。食べ物が、日本では残飯として大量に捨てられる一方で世界では飢えに苦しんでいることと同様に、水も余るくらいある場所とたりない場所がある。日本人は節約にどうしても走りがちではあるが、本当に必要なのは再分配のシステムなのだな、と強く感じた。しかし、そう考えると個人個人ではそういう問題の助けにならないことは少し寂しく思った。

横山 怜太郎    reply

最初は悲観的な立場からのお話のようにも見えたが、水の持つ廉価・大量使用・代替性といったキーワードを用いて水問題を分析し、最終的には「社会システムや購買力の問題」は解決する必要があるとしつつも楽観的な結論となり、目新しいものだった。また、先生の語り口も聞きやすく、見習うべきところが多かった。

T.H.    reply

現代の文化的な生活の象徴としての水を見ると、開発レベルと乳児死亡率に関係があり、負の連鎖をどこかで断ち切れば良くなると考えられる。また、水の偏在性のせいで水不足が生じ、全体量としては、十分に足りているというのは興味深かった。水が安いことで単価に対して考えると輸送できない、というのも面白かった。1人1000㎢分の水が必要であることが面白く、大量に使い、当たり前だと思っているが故の弊害があることを知った。バーチャルウォーターで、水の均等化ができることも知り、貧困を緩和することで水不足も当然解決できると思う。意外と水問題と感情が結びつくことが不思議だった。

M.A.    reply

水をめぐった争いというのは、あまり起こっていなくて、みんあで協力することが多いと知って、おどろいた。水はたくさんあるけれど、それがある場所や時間は偏在していて、問題は、水があるなしではなく、持続しているか否かだということがわかった。また、価格が安すぎて、輸送できないのがわかった。
水と聞くと、飲み水ばかり想像してしまうが、実際には文化的に過ごすために、あるいは食料をつくるために、飲み水の100倍、1000倍の水が必要になると改めて気づいた。いろいろな問題は、意外と、解決の方向に向かっているのだということがわかった。

山田 晃平    reply

水に関しては、なにより偏在が問題なのかな、と思いました。水の多い所に集まって暮らすしかありませんが、人が多すぎるとやはり暮らしてゆけないので周辺にも移ってゆかねばなりません。ということは、水問題を解決するには、何とかして水が豊富な場所に密集して暮らせるようにするしかないでしょう。結局、人が多すぎるのがいけないのかもしれませんね。

福井    reply

地球は水の惑星と呼ばれているが、水不足で悩む人々がたくさんいる。これは水が偏在していて、資源配分が均等ではないからである。水が不足する地域では、水を得るのに時間をとられ、経済成長がしにくく、インフラ整備が不十分で、水不足が良くならないという悪循環が発生している。この悪循環を脱するためには、国連が主導になり、水があり、技術を持っている国が、インフラ整備の手伝いをしてあげないといけないと思った。

森山 健太郎    reply

水の為に戦争が起こる、という話を聞いたことがあったので、実際に起こるかというと疑問符がつくという話は意外でもあり、また話として納得できるものでもありました。食糧不足や水不足について私たちが現実よりも悲観的に考えがちな理由は、日本人は食糧・水について逼迫しているという訳ではないことから真剣に調べようとはせず、これによりキャッチーな文句に釣られやすいことにあるのかもしれないと思いました。

miyakawa    reply

水問題の根本や、水についての通俗的な考えが思い込みにすぎないことを知ることができ、とても勉強になった。また、リスクをどう捉えるか、という話は放射線の人体に対する影響についての議論と通じるところがあるように思われ、非常に興味深かった。

かしわもち    reply

水の輸送や貯蔵ができない、又は難しいことの理由として安すぎる、かさばるというのは盲点だった。特に安すぎるというのは輸送コストに見合わないという非常に解決の難しい問題であり、またそれの対策として水を使ってできた食料を輸入しているという視点でも中々たどり着かないものだった。他の話も、今まで積み上げられてきた水に関する思い込みを全て崩すほど衝撃的なものだった。「水危機【ほんとう】の話」に恥じない内容だったと思う。

S.M.    reply

文系的な内容で正直今までのこの講義の中で一番面白く興味深かったかもしれない。他の講義でも国際協力や合理性と感情についての話を聞いたことがあるので、知識がリンクしていく感じでずっと興味を持って受けることができた。その点で、水に関する国際協力のようなところを扱う職業に将来就くことも面白そうだな、と思った。

KEN    reply

水不足による危機の理由が水の偏在や水資源分配のシステムが十分でない事というのは衝撃的であった。この授業を通して、社会の問題に対して闇雲に対策を打っていても逆効果であったりする事があると分かったので、問題に対して限られた予算の中で本当に効果的な対応をするべきだと感じた。
また、自分たちが一日にどれほど多くの水を使っているのかを知り驚いた。

sawa    reply

水不足が水の偏在からくるということなど、興味深いことが多かった。特に、仮想水の考え方を取り入れた場合日本は水を大量に輸入しているということに驚嘆した。我々日本人は水資源に恵まれていると考えていたが、そうではないと気づかされた。

KY    reply

水文学という未知の言葉から始まった講義だったが、その一つ一つが私たちの生活に身近なもので興味を持って聞けたし、わかりやすかった。水の偏在のために水不足が生じているということや、合理性ではなく感情から生じることが我々の認識を間違った方に導いていることなど、大変勉強になった。

戸塚啓介    reply

水の惑星とも呼ばれるほどに水資源が豊富なはずの地球で、水不足がこんなにも大きな問題になるのは、資源の遍在とその配分の不公平さが原因である。このことは、これからも人口の増え続ける地球においてとても大きな危機になりうる。人にとって他の資源よりもさらに生存に関わる資源であるからこそ、問題はより深刻である。

tarou    reply

今回の講義を通して、節水によっては世界の水不足が解決され得ないということを学び、驚いた。また、それならば何故節水の大切さが盛んに謳われているのか疑問に思った。
水に関する知識が予想以上に誤っているということを思い知らされたが、それは私たちが水に関して不自由することのない日本人であり、水に対して無関心であることに起因しているのではないかと感じた。

大野    reply

寡聞にして「水文学」なる分野を今回初めて知ったのだが、水に関する諸問題に関して極めて冷静に、客観的に取り組む姿勢に感動した。楽観主義でも悲観主義でもない、真面目で冷静な振る舞いというのが今後求められるのだなと感じた。

石川 大希    reply

比較的水資源に恵まれている日本に住んでいると感覚がマヒしているが、世界では水が足りずに問題となっている地域も多い。偏在、また、それに伴う、輸送の問題等を改めて意識させられた。特に水が安すぎて逆に輸送が困難になっていると知って驚いた。このような問題解決のためにもインフラ整備の必要性を改めて感じた。

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