ディシプリン(学問領域)に
とらわれない思考を身につけたい

第9回 12月04日 渡邉 正男

日本中世における水をめぐる争いとその解決

水をめぐる争いは、時代や地域を問わず数多の事例を挙げることができますが、当然ながら、そのあり方は一様ではありません。講義では、鎌倉時代に起こった 用水に関わる争いの事例をいくつか採り上げ、それらがなぜ起こったのか、どのように解決されたのか、残された史料を読み解くことによって、具体的に明らか にします。さらに、それを踏まえて、水をめぐる争いのあり方、争いの中から人々が取り結ぶ関係のあり方の日本中世的な特質について考えてみたいと思いま す。

講師紹介

渡邉 正男
東京大学史料編纂所准教授。 専門は日本法制史。法・制度および権利の関係のあり方が歴史的にどのように変化していったかを、史料に基づいて、具体的に明らかにしたいと考えています。現在は、14世紀の社会秩序の構造変化において、在野の法知識・法技能を有する者達が果たした役割に関心があります。
授業風景

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コメント(最新2件 / 24)

tarou    reply

 他人が植えた農作物を刈り取ることで、自身の所有権を主張することは現在では考えられない行為である一方で、取得時効など現在に通ずる考え方であることが分かり、興味深かった。また、受験の際に日本史で習った守護の刈田狼藉検断権が思い出され、懐かしかった。
 

W.S.    reply

私は日本史を選択しており、苅田狼藉という語は知っていたが、この事例のように実力行使による所有が認められる風潮、規範が存在し、実際にこのような争いが頻発していたことを身を以て知ることができた。権力が多数存在していたり、その間の空白地帯が存在しているということは私にとって身近ではなかったが昔はそのような状態が普通であり、現在もそのような状態が存在する場所があるということに再び気づかされた。

Yamato    reply

司法機関の権力や法体系など、現代では考えられないようなことがあるのが“中世らしさ”なのかと思った。
また、朝廷が判決を下したというのは、幕府の判決に従わない人々が西国に多く、鎌倉幕府の行政・統治機構として力が弱いからなのだろうか…?

横山 怜太郎    reply

現代とはかけ離れた中世の争訟だが、驚いたことに現行の民事訴訟法の概念の枠にあてはめることで、面白いほど理解できる。人間の争いには時代を隔てても変わることのないものが通底していることを感じさせられた。そんななか、この時代には「挙証責任」という考え方だけではないことに気付いた。そしてこの一点こそがこの訴訟が解決を見なかった最大の理由だと思う。そういう意味で、この講義派普段慣れ親しんだ概念を今一度見なおす良い機会となった。後半も楽しみである。

平井 悠登    reply

中世の土地争いの話を聞いて、当時の権利に対する意識の違いを感じました。その背後にある水と人々の結びつきの深さを感じました。

橋本 貴将    reply

水を巡る争いが昔も今もあり、人間というのが変わらないと思わされ、一方で、農作物や、飲用水として、重要性が増していたとも思う。当時の二政府のような状態では、複雑になってしまい、素早い解決や混乱を引き起こしてしまい、現在の官庁のようで、変わってないと思わされた。権利主張のための実力行使が認められるというのは、とても驚かされた。中世での争いが、現在まで水争いの議論をもってくることにも驚かされた。
次回の、双方が納得する判決が楽しみです。

M.A.    reply

過去の実際の資料に基づいて、当時の水を巡る争いを知ることができて、よかった。争いの解決方法で、実力行使できるというのがおもしろかった。当時の制度は複雑で種まいた人が、収穫できるわけではなく、その権利を主張する際に人が死んでも殺人罪にはならないというのが、おどろいた。昔は、証拠をつくりずらくて、やったもん勝ちみたいな風潮があって、おもしろかった。当時の朝廷の変化で裁判の結果がかわり、政治的な事で、司法がかわりそれにふりまわされる人々がかわいそうだと思った。

福井    reply

日本の中世は現在のように水利用に関する技術が発展しておらず、土地によって灌漑しやすい所やそうでない所があり、水が利用しやすい土地をめぐる争いが多かったとわかった。さらに、水や土地をめぐる争いは裁判所や調停で判断されてきたと知り、中世のそのような司法システムの存在にも驚いた。

しゅうへい    reply

日本中世の人々にとって、特に村落といった権力から離れて暮らしている人々にとっては、生活上のルール、規則というものはかた苦しいものではなく、慣習といった細かいところをつくるあいまいなものであったのだdろう。それゆえ、1つ大きな問題が起こると、非日常が生じてその慣習は機能しない。はっきりとしたことがあまりないために争いが長引いたり解決が難しかったりしたのであろう、と感じた。また、それに加えて幕府と朝廷という二大権力が存在しており、どちらが上かという明確な区別がなく、解決法の判断がお互いに任せるようなこともあったことがより複雑にしていたのかと感じた。

tagaga    reply

中世の水利用をめぐる争いについて、当時の史料をもとに学ぶことができた。当時の、権利主張の方法や認識の仕方が現在にも共通しているところがあり、当時の訴状から争いの経過から判決まで、詳しく読みとることができ、興味深く感じた。

S.M.    reply

水という生活に不可欠なものを巡っての争いゆえに激しい実力行使が為されている一方で、公的な機関がそれを仲裁する方法が存外にずさんであったことが、現代と通じているようで異なっているようで、という点で面白かった。当時の人々の土地・水に関する権利や朝廷・幕府の判決に関する認識を知ることができたのも興味深かった。

ikeda    reply

日本の中世の水争いに際して、解決がなかなか難しかったことがわかった。和歌山県で起こった事例なのに、遠く離れた京都や鎌倉でしか裁判を行わなかったということにおどろいた。

黒澤 貴    reply

水をめぐる争いの中世的特質を垣間見ることができた。今回の講義では、中世における国内の統治機関である幕府と朝廷が絡んだもので解決に至らなかったケースを扱ったが、そうした場合の問題点を知ることができた。次回は、そうした機関が絡まずに解決に至ったケースを扱うということなので、現代にも通じるものがあるのではないかと思うので、期待したい。

かしわもち    reply

今までの講義と比べてかなり小さな視点での講義だった。近年激化しつつある水争いは国家単位にまで広がっており、中世の様の朝廷、幕府のように判断を下せる機関が存在しない。今回の話では実効支配が着目されたが、水は生活必需品であるだけに、互いに譲れずに争いが長引いたように思われる。
次回の話は解決した例とのことなので、どのような過程を経て解決に至ったか期待したい。

山田 晃平    reply

現在に比べれば圧倒的に人口が少なかったであろう中世においても、このように激しい水利権の争いがあり、解決に200年もの歳月を要したということに驚きました。しかしもっと驚いたのは、一地方の水利争いにも、中央(?)政府が対応できる程度には統治機構が整備されていた点です。当時にも地方と中央の間には情報インフラが整備されていたのかと感心しました。

合屋 龍之介    reply

普段、幕府や朝廷の機構についてしか学ぶ機会がないので、こうした土地・用水争いについて学べたのは新鮮だった。刈田という行為が、土地を実効支配するぞという姿勢であったということが理解できた。来週が楽しみである。

KEN    reply

裁判制度が確立しきっていない、権力が十分に浸透していない、水をくみ上げる技術がない・・・といった現代では考えも及ばないような中世の状況の中で、どのような係争が行われているのかを教えて頂きとても面白かった。今回の講義を聞いた限り、中世の状況で争いの解決は難しそうだと感じたので、次回の授業でうまく解決した事例を紹介して頂けるのを楽しみにしている。

sawa    reply

実効支配という、現代の国内の法制度の下では考えられないような状況ではあるが、水利争いという現代にも通じる争点に現れていたということが興味深かった。また、水資源というものが時代を超えて大きな重要性を有していることを改めて認識させられた回であった。

戸塚啓介    reply

所有権の考え方に、「実力行使」など中世に独特のものがあるということは知っていたが、実際に水をめぐる争いを例とした話を聞くことができて、より理解ができた気がする。次回の講義で議論がどのような発展を見せるのか楽しみです。

miyakawa    reply

用水をめぐる争いの中に、政権の分裂ゆえに判決が未確定で抽象的なものとなってしまうこと、裁判中にも実力行使が行われることなどの中世的な特質が表れていて、とても興味深く思った。当時書かれた漢文の原文を通して争いを読み解くことによって、当時の人々の考えを直接感じることができた。

大野    reply

日本史のきっちりした勉強は中高でそれほどしなかったため、少し背景知識が足りなかったかもしれない。しかし、むちゃくちゃな実力行使や、適当な中央の対応など、当時の雰囲気が伝わる(適切な表現かわからないが)なんともかわいらしいお話だった。まあ昨今、国家間の交渉ごとで実行支配というワードがちらつく中、中世の人おもろいかわいらしいなどと行っては居られないような気も……

石川 大希    reply

受験で日本史を選択していたので刈田狼藉というワードは知っていたが、今回、具体的な内容まで知ることができ、非常に興味深かった。実力行使による所有権主張や、政府の裁定に従わないこと、二重政府状態による案件のたらい回しなど、その当時の時勢を反映していたことも非常に興味深いと思った。また、現代にも尾を引いているという話から、それに驚くと共に、水がとても深く生活に根ざしているということを実感した。

KY    reply

水争いが中世の昔からあったというのは予想できなくはなかったが、その争いが想像の域を超える長い年月にわたっていたのは驚いた。当時の制度も現代では考えられないものもあり、勉強になった。幕府・朝廷が入ることで長引いていたようだが、次回はそれらが介在せずに解決した事例ということで楽しみにしたい。

森山健太郎    reply

高校時代に日本史を選択していたわけではないので知識が身についておらず、そのため具体的な話は理解できているか不安ですが、水の重要性は中世においても明確なものであり、紛争の解決に幕府・朝廷が関与するほどのことであった一方で、現代とは違い二十正負状態であったがゆえに解決がなかなかなされず、裁判中に実効支配を行おうとするなどの、いわば粗野な展開があったというのは面白い点だと思いました。

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